
ヤンキー・スタジアムでメジャー初本塁打を放った松井
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2003年4月8日だ。
この年、ヤンキースに入団した
松井秀喜の本拠地デビュー戦の相手はツインズだった。松井は第1打席が二ゴロ、第2打席は四球となったが、球場の声援はすさまじいものだった。そして3打席目が5回裏、四番のバーニー・ウィリアムズが敬遠され、一死満塁の場面だ。前の打者の敬遠は2度目。前回のトロントでは内野安打に終わっている。打席の松井の表情は変わらなかったが、球場のボルテージはマックスまで上がった。
フルカウントからメイズが投じたのが、得意のチェンジアップ。それが真ん中に入ってきた。松井のバットに迷いはない。鋭く振り抜くと、ボールはライトスタンド中段に飛び込む。メジャー初本塁打が地元開幕戦、しかも劇的な満塁本塁打となった。
松井は表情を変えないまま、ダイヤモンドを1周したが、本塁を踏んでナインの祝福の表情を見た途端、一気にくしゃくしゃの表情。さらにベンチの中でもみくちゃにされた後、トーリ監督に耳打ちされると、さっと飛び出し、帽子を上げる“カーテン
コール”も披露した。
ここまで開幕から6試合、本塁打が出ていなかった松井。試合後の会見では、いつも本塁打の話が出て、そのたび「意識はしません。いずれ出るでしょう」と、いつもほとんど同じ答えを返してきたが、実際、1号が出たこの日の答えも、基本的には変わらなかった。
「遅いといえばそうかもしれないけど、簡単に出るものではないと理解していたので。もちろん、本塁打にこだわりはありますが、意識し過ぎることなく、徐々にそういう方向に持っていければと思います」
ただ、これまでの日本での332本の本塁打と今の違い、つまり333本目なのか1本目なのか、と聞かれたとき、少し表情が変わった。
「違うでしょう。1本目ですね。333本目ではないと思います」
写真=Getty Images