
延長10回裏にサヨナラ打を放った喜多はこぶしを天に突き上げた
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2002年5月3日だ。
「イチ、ニ、サン! ですよ。打球が勝手に飛んでいきました」
こういって細い目をさらに細くして喜んだのは
ロッテのドライチ新人の
喜多隆志だった。左打者がしっかり振った打球は150キロの速球を利用するような格好で左翼線に飛んでフェアになった。三塁走者がホームを踏んでロッテのサヨナラ勝ちだ。
この日の
西武戦(千葉マリン)は9回を終わって3対3の同点。10回表をしのいだロッテは、その裏無死満塁と絶好のチャンス。ここで打席に入った喜多が、
森慎二の150キロ速球をたたいたのだった。
この喜多、前の試合でもでっかい仕事をやっている。1日のダイエー戦(千葉マリン)の9回裏一死満塁で打席に入った喜多はここまで4タコ。それでも
山本功児監督が喜多をそのまま送ったのは、マウンドが同じルーキーの
飯島一彦だったからかもしれない。喜多は飯島のシンカーを拾って中前へ。プロ7打席目の初安打が劇的なサヨナラ打となった。
「新たな野球人生の1ページの始まりが今日です」と喜多。慶大時代、東京六大学シーズン最高打率をマークした男の意地の一打だったかもしれない。
しかも喜多は次の試合で早くも野球人生の2ページ目をめくってしまった。ルーキーの2試合連続サヨナラ打はパ・リーグ史上初の快挙だった。
写真=BBM