
慶大・柳町は早大1回戦で東京六大学リーグ史上33人目の100安打を達成。一塁ベース上で喜びをかみしめた
18年ぶりの快挙である。
慶大・
柳町達(4年・慶應義塾高)が6月1日、早大1回戦で東京六大学リーグ史上33人目の100安打を達成した。
1点を追う7回表の先頭打者で、早大の左腕・
早川隆久(3年・木更津総合)のスライダーを抜群のバットコントロールで左前へ運んだ。慶大はこの回、柳町が同点のホームを踏んだものの、8回に早大に勝ち越されて惜敗している(2対3)。
開幕3カード目の東大2回戦(5月5日)で2安打を放って「王手」としてからが長かった。明大との2試合で7打数無安打に終わると、この日の早大1回戦でも3打席凡退。第4打席、14打席ノーヒットという苦しみを経てつかんだ金字塔だった。
「気にしないでいましたが、いろいろな方から『あと1本』と言われて……。ちょっと力が入っていた部分はあった。できれば早く打ちたかった」
大学野球において投手は通算30勝、野手は通算100安打が「超一流」と言われている。
1925年秋のリーグ創設から33人しかいないのだから、この記録がいかに偉大か。
柳町を含めて達成者の内訳を見ていくと、慶大がトップの11人で次いで早大の9人、立大6人、法大4人、明大3人と続き、東大の到達者はいない。1年時から出場し続けないと届かない安打数。柳町は1年春から100安打を達成したこの早大1回戦までの89試合、一戦も休まず神宮に立ち続けている。
慶大では、2001年秋の
喜多隆志(元
ロッテ)以来18年ぶり。「あまり、実感は沸かないですが、しっかり積み重ねてこられたのは良かった」。伝統のKEIOのユニフォームを着て7年目。一貫教育校である慶應義塾高出身者では初の大台突破である。試合後にその事実を初めて聞かされた柳町は「光栄だと思います」と、しみじみと語った。
チームのため、目の前の打席だけに集中している柳町は、数字への執着はあまりない。しかし、次なる目標について報道陣から「119本?」と問われると、柳町はすぐさま反応している。
「由伸さんですよね? それを超えられるように、チームの勝利につながる一本を打っていきたい」
慶大の大先輩・
高橋由伸(
巨人前監督)が放った歴代6位の安打数を目指すと明言。歴代1位は明大・
高山俊(現
阪神)の131本。慶大では
堀場秀孝(元
広島ほか)の125本(歴代3位)がトップである。柳町が4年春に達成すること自体がハイペースであり、ラストシーズンの同秋を含めてどこまで積み上げていくのか、興味は尽きないところである。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎