
世界記録を達成して試合後、ロッカールームでナインと乾杯
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は1983年6月3日だ。
このシーズン、何よりも注目を集めていたのが阪急・
福本豊の通算盗塁の世界記録だった。当時、世界一の通算記録を持っていたのは79年に引退したメジャー・リーグのルー・ブロック(カージナルス)の938個。前年までに福本が記録していたのは919個。19個の盗塁を記録すればタイ、20個で新記録となる。
開幕から順調に盗塁を重ねてきた福本に、その日は意外に早くやってきた。6月3日、
西武球場での西武戦。この日までに、937個まで通算盗塁数を伸ばしていた。世界タイ記録、そして新記録は目前だ。
西武の先発は
高橋直樹。1回表、先頭打者としてファウルで粘って13球目に四球を選んだ福本は、下手投げでモーションの大きい高橋からあっさりと盗塁を成功させ、タイ記録に並んだ。
残るは新記録だけ。しかし、その日の試合は9回に福本の打席を迎えたところで11対6と西武が大きくリード。福本にすれば、記録のために走っていると思われるのも嫌。できれば勝ちゲームで走りたいと、出塁はしたものの、そこでは盗塁を封印することを心の中では決めていた。
次打者・
弓岡敬二郎の二ゴロで二塁へ。投手は右腕の
森繁和。西武のショート・
石毛宏典に「今日は走らん」と声を掛けたが、その言葉を信じなかったのか、3年目でまだ若い石毛が生真面目に役割を果たそうとしたのか、執拗に何度も牽制に入ってくる。
ここで福本の負けん気に火がついた。執拗な牽制を挑発と感じた福本は、数分前までの決断を翻して三塁に向けてスタートを切った。あっさりと成功したが、福本はのちに「やっぱり走らなければよかった。後悔している」と語っている。ともあれ、これでルー・ブロックの持つ記録を更新して“世界一”の座に就いた。
写真=BBM