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カブスと3年契約を交わしたキンブレル。FAで契約金が高騰しどのチームも敬遠したことで、今季所属先がなかったが、ようやくカブスと契約。ここから輝けるか⁉
トレードデッドライン前、ブルペン投手の争奪戦が激化しそうだ。現時点でプレーオフ進出濃厚ないくつかのチームが、そこを弱点にしている。ア・リーグ中地区の首位ツインズがブルペン防御率4.63(MLB21位)、ナ・リーグ中地区首位ブリュワーズが4.43(18位)、ナ・リーグ西地区首位ドジャースが4.34(16位)、ナ・リーグ中地区2位カブスが4.30(15位)である。
ナ・リーグ東地区首位のブレーブスもブルペンを必要としている。完全な売り手市場だ。人気を集めそうなのはインディアンスのブラッド・ハンド、ジャイアンツの
ウィル・スミス、ナショナルズのショーン・ドゥーリトルと空振りを取れる左腕である。そのほかタイガースのシェーン・グリーン、ブルージェイズのケン・ジャイルズの両右腕も良い。
買い手は品定め+投手の在籍球団のGMに連絡を取る。売り手は少しでも良いプロスペクトと交換しようと、スカウトを各地のマイナーの試合に派遣し始めるのである。6月8日、カブスのリグレー・フィールドでクローザー、クレイグ・キンブレルの入団会見があった。
彼は昨オフ、レッドソックスからのクォリファイングオファー(1年1790万ドル)を蹴ってFAに。しかし今オフどのチームとも合意できなかった。通算333セーブの大物だが、昨季後半は防御率5.08。ポストシーズンは10回2/3で8与四球。レッドソックスは先発投手を抑えに回し、なんとか世界一にこぎつけた経緯がある。
「?」付きの投手なのだが、カブスは6月になって3年4300万ドルの大型契約。獲得理由はすでにドラフトが済み、指名権を奪われないこと。ベン・ゾブリストが離婚問題で5月8日にチームを離れ、彼のサラリーが最大で約900万ドル浮き、キンブレルに回せるからである。
セオ・エプスタイン編成本部長は「オフの間は、いくつかの理由で彼とサインできる状況にはなかった。シーズンに入って両サイドとも変わったため、契約が現実的になった」とこの契約について説明した。
キンブレルは「野球に情熱的なファンの前で投げたい。
ボストンがそうだった。私はアドレナリンが基盤の投手。ここに来れて良かった」と話している。過去の例から心配なのは、契約がここまで遅れて、その年活躍できた選手が少ないこと。遅れた分、少しでも早く復帰しようと焦るのが裏目に出る。
そこで首脳陣はアリゾナで少なくとも1週間のミニキャンプを張らせ、それから3Aに送る計画。合流は7月になりそうだ。「10月に向けてやってもらう、それがわれわれの主要方針」と編成本部長。もっとも球団フロントはキンブレル獲得で安心できるとは思っていない。
空振りを取れる左腕が必要だし、ナ・リーグのライバル、ブリュワーズやドジャースの動き次第では、再びカウンターパンチを打たねばならない。カブスは17年のオフ、ブランダン・モロウと2年2100万ドルで契約、クローザーの役割を期待したが、ケガで昨季の7月を最後にマウンドに立てていない。
お金であろうが、プロスペクトであろうが、投手は買い続けるのがこのチームの流儀。7月末まで、最善を尽くすのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images