
自分が信じたストライクゾーンを積極的にスイングにいく大谷。それがいい結果としてついてきている
MLBのデータサイト、ファングラフスによると、今季MLBでボール球にもっとも手を出さないのはアストロズのアレックス・ブレグマン(18.6パーセント)、レッドソックスのムーキー・ベッツ(19パーセント)、エンゼルスのマイク・トラウト(19.7パーセント)、レッズのジョイ・ボット(19.9パーセント)。メジャー平均は31パーセントくらいで、特に選球眼の良い打者たちである。
一方でストライクゾーンの球をどんどん振る打者はメッツのジェフ・マク
ニール(84.6パーセント)、ブレーブスのフレディ・フリーマン(82.8パーセント)、アスレチックスのクリス・デービス(82.7パーセント)、レイズのアビセイル・
ガルシア(81.1パーセント)。こちらのメジャー平均は68パーセントくらいである。
MLBで日々進化を続ける打者、
大谷翔平が特に心がけているのはここ。6月28日、3安打の試合の後、「ストライクゾーンをしっかり振ること。そこを一番大事にしたい」と話した。とはいえ、打者ならストライクゾーンでも苦手なコースがある。大谷もここまでの数字を見るとインハイは打率.000であり、真ん中低めは.200だ。
だが本人は、「ゾーン内に来た球に対しては、(バットの)軌道をズラすことなく対応できる。崩されない中でしっかりボールをとらえていけば」とストライクはすべて打つと説明した。言うまでもなく、ゾーン内でより多くのコースをカバーできれば、自信を持って打席に立てる。特定の(苦手な)コースでいつもやられることはないし、特定の(得意な)コースだけを待つ必要もない。
ちなみに今季のエンゼルスはMLBでもっともボールをよく見るチームだ。ボール球は26.4パーセントしか手を出さないし、ストライクも61.8パーセントしか振らない、スイング率も41.9パーセントと低い。3項目すべてMLB1位である。大谷も昨年は32.3パーセントのボール球を振っていたのが今年は27.7パーセント。
しかしながらゾーン内はどんどん振る。昨年65.3パーセントのストライクを振っていたのが今年は71.9パーセント。トラウトは57.8パーセントしか振らないが、メジャー9年目のベテランとは一緒にならないと思う。振って振って、相手投手を知り、MLBでの打撃の感覚を磨いていく。6月30日、2本塁打を放った試合後「試合勘、打席の感覚、徐々に良くなっている。もっと上げていければ」と話した。
その試合、1対5の6回、無死一、二塁。長打が出れば流れが変わる局面で、大谷は1-2の5球目、内角高めの明らかなボール球をストライクと判定された。大谷はヘルメットをつかみ一瞬抗議しかけたが、すぐ下を向き、険しい表情でベンチに下がった。実況アナは「このシリーズ2度目、明らかなボールでアウトにされました」と同情した。
しかし、その次の打席では落ち着きを取り戻し、笑顔を作って審判にあいさつをした。「何回ストライクを取られても振らないと思う。そこを引きずってしまうと難しい。審判がストライクといえばストライクですけど、長い目で見たときに、自分の目を信じて良いんじゃないか」。そして2ボールから投じられた3球目のストライクを136メートル弾。基本徹底で結果を出していく。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images