
プロ初本塁打を放った三家
2016年オフ、千葉・鴨川での
ロッテ秋季キャンプ。BCリーグのユニフォームに身をつつみ、顔を引きつらせながらも快音を連発して必死のアピールに成功。テスト入団を勝ち取ったのが
三家和真だ。
市和歌山高から育成ドラフト4位で2012年に
広島へ入団を果たすも、13年オフに戦力外通告。BCL/信濃、石川で腕を磨き直して17年から4年ぶりのNPB復帰を勝ち取った苦労人。左右ともにパンチ力も備えたスイッチヒッターにして、外野だけでなく内野もこなすユーティリティーでもあるが、ロッテ入団後もなかなかチャンスに恵まれなかった。
プロ初出場の機会が訪れたのは一昨年、5月23日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)だった。代打で初打席に立つと、三ゴロに終わるも一塁へヘッドスライディング。「1球のボールに全力でいく。それだけ」という言葉を体現したプレーだった。
俊足巧打の外野手。同タイプの選手はチームに数多くひしめいており、これまでは厚い壁に阻まれていたが、今季はその“壁”たちがそろって思うように調子が上がらず。ようやく三家にチャンスが回ってきた。7月3日の
オリックス戦(京セラドーム)でプロ初安打となる二塁打、そして7月21日の
日本ハム戦(札幌ドーム)ではスタメン出場を果たし、第1打席でプロ初本塁打を放っている。
「初めてのホームラン。これを何回も味わえたら最高やと思います」と笑顔で振り返った一発は右打席から放たれたものだった。左右で言えば右打席が課題だと言われる中での一撃だったが、もともとは右打ちだ。
左打ちにもトライするようになったのは高2の冬。体育の授業でソフトボールをプレーしたとき、野球部は打ち過ぎるということで普段とは逆の打席に立つことになった。左打席に立った三家は、MLBのジャイアンツなどで活躍したスラッガー、バリー・ボンズのモノマネをして打席に立った。すると野球部の監督でもあった体育の先生から「お前、左も行けるやん。真剣に左打ちもやってみろ」と声を掛けられ、その日の練習から左打ちにも取り組むようになっていった。
軽い気持ちでやってみたモノマネから始まったスイッチヒッター人生。それが今では三家にとって大きな武器となっている。このまま一軍に定着し、上位進出を目指すチームに新風を吹き込むことができるだろうか。
文=杉浦多夢 写真=BBM