日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。 どちらが勝っても初優勝

開会式のリハーサルで健闘を誓い合っていた星稜・奥川(右)と履正社・井上。明日(8月22日)の甲子園決勝、今春のセンバツ1回戦以来の再戦へ、注目度は高まるばかりだ(写真=田中慎一郎)
全国3730校の頂点をかけた決勝が8月22日、14時から甲子園球場で行われる。
履正社と星稜。どちらが勝っても初優勝である。両校は今春のセンバツ1回戦で対戦。星稜がエース・
奥川恭伸(3年)の17奪三振、3安打完封(3対0)で勝利している。
勝負を左右する注目対決は、最速154キロ右腕・奥川と履正社の四番・
井上広大(3年)だ。
奥川は「全員が素晴らしいバッター」と語り、「(センバツとは)別のチームの印象」と警戒感を示すと「自分たちも上積みがあるので楽しみ」と持ち味の笑顔で応じた。
井上はセンバツで4打数無安打(2三振)。しかも、3点を追う9回は最後の打者(投併殺)と、右の大砲として見せ場を作ることができなかった。
打倒・奥川――。
この屈辱を糧に猛練習を重ねて、春夏連続の甲子園へ戻ってきた。大阪大会では準々決勝から3試合連続アーチを含む計4本塁打。甲子園でも好調を維持し、準決勝までに21打数9安打、打率.429、2本塁打、11打点。5試合で41得点の強力打線をけん引している。
「センバツは奥川君にさっぱりの結果。見たこともないボールでした。何とかして打ち方を変えないということで取り組んできた。成長できる過程としては良かったと思います」
最も重視してきたのは変化球への対応だ。「体の中で打つ」と、追い込まれてからは、ポイントを近くにして振る意識。結果的に長くボールが見られるようになり、鋭い変化球にもついていけるようになった。高校生としては規格外のヘッドスピードなくして、反応できない技術と言える。
対する奥川は中心打者には、明らかにギアを上げてくる傾向にある。中京学院大中京との準決勝では変化球を中心にテンポの良い投球が目立ったが、ポイントゲッターの四番・
藤田健斗(3年)、準々決勝で逆転満塁本塁打を放った
元謙太(2年)には150キロ超のストレートを連発していた。
当然、井上との対戦でも、トップギアで挑んでくることが予想される。奥川の自己最速の更新、つまり甲子園最速タイの155キロ(07年夏の仙台育英・
佐藤由規、13年夏の済美・
安樂智大)が出るかに注目が集まる。
2019年夏の決勝は星稜・奥川と履正社打線の構図。深紅の大優勝旗、令和初代王者をかけた真剣勝負から目が離せない。
文◎岡本朋祐(週刊ベースボール編集部アマチュア野球班)