攻守に好調を維持する鈴木
持ち前のキャプテンシーだけではない。今季は攻守にわたり、文字どおりチームをけん引している。
ロッテのチームリーダーにして新選手会長の
鈴木大地だ。6月に打率.344、7本塁打、21打点で初の月間MVPに輝いて以降は常時3割をキープ。本塁打はすでにキャリアハイの14本を数えている。
圧巻は守備だ。遊撃でレギュラーをつかみ、二塁にコンバートされた17年にはゴールデン・グラブを獲得。昨季は三塁に再コンバートされた男が、今季は一塁を主戦場にありとあらゆるポジションでハイレベルなパフォーマンスを披露している。
ここまで先発出場は一塁の65を筆頭に、DH17、三塁9、二塁8、そして左翼が7。それでいてトータルの失策はわずかに1。今季はプロ入り後初の外野守備にも就いた。プロ2度目の外野起用となった6月18日の
広島戦(マツダ広島)では、5回に
バティスタの本塁打性の当たりをもぎ取るスーパーキャッチも見せた。
今では“スーパーユーティリティー”と呼ばれ、誰かの代役を担うことはあってもラインアップにおいては替えが利かない存在となっているが、それでも鈴木は「そんなことないだろうって思われるかもしれませんが、今でも自分の中ではすごく危機感を持ってやっていますし、いつどうなるか分からないと思っています」と話す。
思えば3月29日、ZOZOマリンでの
楽天との開幕戦。スタメンに鈴木の名前はなかった。それだけではなく、最後まで出番が訪れぬまま、2015年から続いていた連続試合出場も532でストップした。そこからのあまりにも鮮やかな逆襲。
「開幕戦のあとは、このままでは終わりたくないという気持ちがこみ上げてきました。だから、どんな場面でも『行けるか』と言われたときに、絶対に躊躇したくなかった。何があってもいいような準備をしておこうと思ったんです」
何でもやってやる――。そう腹をくくり、その覚悟に見合う準備と努力を重ねてきたからこそ、ただのユーティリティーではない“スーパー”な存在へと変貌することができた。
打撃面でも“腹をくくった”ことがあった。「これまではどうしても打率3割という目標があった。そのためには逆方向を含めて、きれいに打たなければならないという意識がどこかにあった」という。だが、「悔いなくやるためには、せめて追い込まれるまでは自分の良さである“思い切り打ちにいく”ということをしようと思いました」。
これまで頭の片隅にあった打率3割という欲が、今は微塵もないという。その結果、身上である思い切りのよいスイングを取り戻し、キャリ初の3割が視界に入ってきた。「あえて目標というのなら、今季中に通算1000安打を達成したいということですかね。まあ、正直それもあまり意識していないですけど。とりあえず毎日、頑張ろうという感じなので」。
プロ8年目、30歳を迎えたシーズンでの劇的な進化。何よりプレーヤーとしての可能性を大きく広げた今、残り26本に迫った通算1000安打も、これからもまだまだ続いていくキャリアの通過点に過ぎないはずだ。
文=杉浦多夢 写真=BBM