読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。 Q.テレビの解説などで打者が凡退したときに、“打ち損じ”や“ミスショット”というような言い方をします。これは、どういう状態のことを言うのでしょうか。ただの凡打とは違うのでしょうか。(熊本県・30歳)
A.バッターのイメージどおりのボールに対して、力んで体が開いたり差し込まれたりして凡打すること

元ソフトバンク・柴原洋
確かに質問の方が言うように、私もテレビなどで解説をさせていただく場合に、“打ち損じ”や“ミスショット”という表現を使うことがあります。
解説者がこのように表現するのは、バッターの立場になって考えてのものです。例えば「このポイントに来る」とか、配球が読めていて、そのとおりのボールが来たとき、つまり、バッターの頭の中でイメージしていたとおりのボールが来たにもかかわらず、芯を外してしまうとか、ファウルにしてしまうような場合に、われわれは“打ち損じ”や“ミスショット”という言葉で表現します。
放送席から、また、モニターで見ていて、良いポイントで当たっていそうなのにポップフライになったり、タイミングがばっちり合っているのにファウルになってしまう場合がそうで、その後のバッターの「しまった」という表情や、悔しがるような素振りを見ていれば打ち損じだったかどうかが分かるものです。
当然、われわれ解説をしている者も、その悔しさをよく理解できるので、場合によっては感情を入れた表現になったり、逆に場面によっては「もったいない。しっかりとらえないと」というような形の表現となります。
ミスショットや打ち損じの最大の原因は、「よし、来た!」とバッターが思うことによる力みでしょう。その気持ちはよく理解できます。遠くに飛ばしてやろう、ホームランを打ってやろう、強くコンタクトしてやろうと思うことで、体の開きが早くなってしまったり、逆に体(腕)に力が入り過ぎて思ったようにバットが出てこなくなって、差し込まれてしまいます。どちらかと言えば、前者(体が開く)の場合のほうが多いでしょうか。
平常心ならばまず間違いなく芯でとらえていたボールに対し、ポイントがズレてしまい、引っ掛けてファウルにしたり、ラインドライブのファウルもしくはポップフライと、イメージの打球とは異なる結果になってしまいます。
ここまでの解説で分かっていただけると思いますが、質問の方の言う「ただの凡打」との違いは、ピッチャーの球威に抑え込まれたり、変化球についていけずに“打ち取られた”凡打ではないということです。これも含めて技術です。
●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。
写真=BBM