高校生、大学生の計5選手への競合を予想
高校生と、大学生と社会人、それぞれ別々に行われていたドラフトが“一括開催”に戻って4年目となる平成23年、2011年のドラフトだが、週刊ベースボールではドラフト展望を初めて、高校生と、大学生と社会人、それぞれ2週にわたっての“分離開催”。前年に引き続いて有力選手の階層化を試みているが、これも別々に展開した。
高校生では、1位での指名が重複すると予想していたのは超高校級スラッガーで東海大甲府高の
高橋周平1人のみ。単独指名の可能性があるのは英明高の
松本竜也、宮崎日大高の
武田翔太ら2人の投手で、外れ1位の候補には足立学園高の
吉本祥二、金沢高の
釜田佳直、唐津商高の
北方悠誠ら3人を挙げていた。
一方の大学生、社会人では、4選手に指名が重複すると予想。東海大の
菅野智之を筆頭に、明大の
野村祐輔、東洋大の
藤岡貴裕、慶大の
伊藤隼太ら4選手で、伊藤を除く3選手は、いわゆる大学“BIG3”の投手だ。単独指名の候補は1人のみで、近大の
中後悠平。外れ1位の候補には、東洋大の
鈴木大地、日体大の
辻孟彦ら2人を挙げていた。
“希望枠”なる“逆指名”が廃止されて5年目となるドラフトだったが、制度としてはなくなっても、若者たちに将来の希望があるのは変わらない。制度の廃止からも、希望の球団を明言し、それ以外の球団からの指名を牽制するケースも少なくなかった。この11年のドラフトで注目選手の筆頭だった菅野は、叔父が
巨人の
原辰徳監督で、“相思相愛”は誰の目にも明らか。巨人も早くから菅野の指名を明言しており、その指名、そして入団も確実視されていた。だが、長く遠ざかっていた感もあるドラフト特有の悪夢が菅野を襲う。
【2011年・12球団ドラフト1位】
ロッテ 藤岡貴裕
横浜 藤岡貴裕→松本竜也→北方悠誠
楽天 藤岡貴裕→
武藤好貴 広島 野村祐輔
オリックス 高橋周平→
安達了一 阪神 伊藤隼太
西武 十亀剣 巨人 菅野智之→松本竜也
日本ハム 菅野智之×
ヤクルト 高橋周平→
川上竜平 ソフトバンク 武田翔太
中日 高橋周平
(→は外れ1位。×は入団拒否)
菅野は入団を拒否して浪人の道へ

クジで日本ハムが菅野の交渉権を引き当てたが……
かつては“仕掛ける”ことが多かった印象のある巨人だが、この11年は菅野を指名する可能性を見せなかった日本ハムの“奇襲”を受ける。そして、抽選の惨敗が続いていた巨人は、またしても交渉権の獲得ならず。
だが、日本ハムも菅野の決意を覆せなかった。会見では毅然としながらも、このドラフトで唯一、暗い表情を浮かべた菅野は浪人の道を選んだ。一方、野村は高校時代の地元チームでもある広島が単独指名に成功して、“凱旋”が確定。左腕の藤岡には最多の3球団が競合し、ロッテが交渉権を獲得した。
そして予想どおり、高校生で唯一、指名が重複したのが高橋だ。藤岡と並ぶ3球団が競合し、中日が交渉権を獲得している。
DeNAへの球団の売却で揺れていた横浜は藤岡を外して、松本を指名。菅野を外した巨人と再び競合し、ここでは巨人が勝者になる。横浜の球団譲渡が発表されるのは、その1週間後のことだった。
写真=BBM