
早大は慶大2回戦で雪辱。1勝1敗のタイとし、慶大の10戦全勝優勝を阻止した
早慶戦は別物、と言われる。1903年から始まった伝統の一戦。双方とも、ライバル心をむき出しにしてくる。数多くの名勝負が展開され、こんな言い伝えもある。
「前評判が高いほうが負ける」
2019年秋、慶大は早大1回戦(11月2日)で3季ぶり37度目のリーグ優勝を決めた。7対1の快勝。開幕9連勝の慶大は、重圧をはねのけ「前評判」どおりの実力を見せた一方で、すでに優勝の可能性が消滅していた早大は、投打ともに精彩を欠いた。
翌3日の2回戦。慶大は91年ぶりの10戦全勝優勝をかけた大一番だった。早大の合言葉は「土をつける」。6対4で雪辱し、慶大の歴史的快挙を阻止したのである。ワセダの意地。この一言に、集約されるだろう。
今春から早大を率いる
小宮山悟監督は言う。
「勝利への執念。(2回戦も)やられる可能性のほうが高かった。スタンドの方たちも『無理だろう』と……。早慶戦は特別だ、と常々言ってきた。個人的に思い入れもあるが、ふがいない試合だけはしたくない。(3点を先制した)初回の攻撃がすべてだったと思う。(こういった試合が)できるはず。できなかったことは、大いに反省すべき。(卒業する)4年生は手直しがききませんが、3年生以下は、来春に生かさないといけない」
1回戦は継投に失敗。小宮山監督はミーティングで学生に頭を下げ「ミスを君らの力で、取り返してほしい」と訴えた。指揮官の期待に見事、選手たちはこたえたのである。
3回戦の11月4日は、13時プレーボール。早大には、もう一つのモチベーションが残されている。
「勝ち点を取って、完全優勝を阻止する」(小宮山監督)

慶大は「91年ぶりの歴史的快挙」は逃したが、完全優勝へ頭は切り替わっている
無敗Vを阻まれた慶大・
郡司裕也(4年・仙台育英高)は2回戦後、努めて冷静だった。
「野球って、難しいですね。91年ぶりだ、なんだかんだ言われてきましたが、(負けたことは)仕方ないですし、終わったこと。完全優勝はずっと、言い続けてきたことなので、そこは達成したい」
1年秋から正捕手。レギュラーとして迎える7度目の早慶戦。あらためて「早慶戦の難しさ」を知ったのか?
「そんなにうまくいかないとは思っていたので……。ある程度、想定内です」
グラウンドに立つ者にしか分からない、早慶戦の重圧。郡司は打撃3部門でトップ(打率.414、2本塁打、9打点)を走っているが、個人記録には興味はない。早大の主将・
加藤雅樹(4年・早実)も「優勝は逃しましたが、ワセダとしては、慶應に勝利することが大事。集大成。4年間の積み上げを出せたらいい」と完全燃焼を誓う。
がっぷり四つの3回戦。ここまでくれば「前評判」は関係ない。早大と慶大、お互いの名誉をかけた意地と誇りの激突である。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎