
ウインターミーティングで、大谷が先発登板する試合で打席にも立たせる考えを明らかにしたマドン新監督。そのほか名将ならではのアイデアをメディアに語った
ウインターミーティング、エンゼルスのジョー・マドン新監督が大いに語った。やはり気になるのは
大谷翔平の起用法だ。先発で投げたときに打席にも立つ、リアル二刀流を検討しているという。
「やらない理由はない。年に50打席増える。ファンも楽しむだろう」。
日本ハム時代、投打同時出場の試合は9勝1敗、防御率1.28だった。
エンゼルスは最初の2年間、大谷が無理をしないように細心の注意を払った。だがマドン監督は「これまでやってこなかったからといって、できないわけではない。CHINA DOLL(古い世代が使う表現。華奢(きゃしゃ)で壊れやすい、か弱い女性の意味)のような扱いをすべきではない。厳しいリハビリも乗り越えてきた。野球選手に戻るとき」と言う。そして「アスリートやピッチャーをプロテクトする上でときにわれわれはやり過ぎる。彼は特別なんだ。彼は打つ必要がある。それだけ良い選手だから」と説いた。
もともとマドン監督は二刀流に大きな興味を持っていた。マイナーの選手に試させるべきだと持論を明かす。「もっとマイナー・リーグで試してみるべき。もしその選手が走れたり、打撃の素質を見せているなら、登板しない日はDHで使えばいい。そうしておけば、投手としてダメになっても、スピードのある選手や、打てる選手として残れる。レッズのマイケル・ロレンゼンは素晴らしいし、ああいう能力を持った選手はいる。球団が許せば、ウインター・リーグの試合を利用すべきだ。もっと面白い試合、楽しめる試合を見たいなら、各チームが5、6人の選手を送り込んでプレーさせればいい。ジムでワークアウトばかりしているのでは必ずしも野球の戦い方を学べない」。
体を鍛え、パワーをつけるのはいい。だが野球は本来、細かい多様な技術が勝敗を分ける競技。多才な選手は才能を生かさせ、技術が向上するように実戦で腕を磨けというのである。
65歳のマドン監督は長い野球経験から、しっかりした自分の意見を持っている。MLB機構ももう少しこういったベテランの意見に耳を傾けるべきだろう。新たなルールで、投手のワンポイント起用ができなくなり、最低でも3人の打者に投げるか、イニングを締めくくらねばならなくなった。
「試合のペースを上げ、試合時間を短くすることには賛成。しかしながらこのルールは嫌いだ。野球ならではの戦略を変えてしまうし、聖域を犯すようなものだ。代打を許しているのに、一人の打者のために投手を代えられないのはおかしい」と反対する。
サイン盗みについても厳しい目を向ける。「ステロイドと一緒。二塁ベースから自分の目でサインを盗むのは良い野球だが、テクノロジーを使ってセンターカメラで盗み、ダグアウトで音を鳴らして、笛を吹いて教えるというのは、良い野球ではない。野球らしいプレーをうまくできたほうが勝つ、そういうゲームにしないといけない」という。
ご意見番マドン監督が大谷とどんな野球を見せてくれるのか、今から楽しみである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images