読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。 Q.プロ野球を見ていると、特に二塁ランナーが塁間を結ぶ線上にリードを取ったり、ラインの後方に取ったりしているようです。どのようなケースで違いが出てくるのでしょうか。(神奈川県・13歳)
A.単純にバントのケースはライン上で二死なら目いっぱい後方。ただし盗塁のケースは工夫が必要でアレンジも自由です

イラスト=横山英史
基本的にはアウトカウントによって、試合展開によってリードの取り方は異なってくるのですが、ケースうんぬんよりも、塁間を結ぶ線上(つまり真っすぐ)にリードを取る場合と、ラインの後方に取る場合の目的の違いをまず頭に入れておいてください。
ノーアウトやワンアウトでバントのサインが出るような場合は、真っすぐにリードを取ります。最短で次の塁(この場合は三塁)にたどり着きたいですからね。ラインの後方に取るということは、あらかじめ膨らんでおくことを意味し、ワンヒットでホームにかえる場合に、三塁ベースを回りやすいように、と考えてのものです。真っすぐにリードを取って三塁を回ってホームを狙おうとすると、かなり三塁ベースに近い位置(リード、第2リードでかなりの距離になるからです)から急激に膨らむ必要があり、スピードも落ちますし時間的にもロスとなるからです。
単純に考えると、バントのケースはライン上、ワンアウト、ツーアウトなら目いっぱい後ろでしょう。守備側もランナーのリードの大きさは注意深く見ていますから、ライン上だから「何かあるな?」と考えるものですが、だからといって、リードの取り方を変える必要もないですし、そこはセオリーどおりでいいと思います。
以前、このコーナーで三盗を狙う場合のリードの取り方について、けん制のサインを出させづらくするために、ピッチャーがセットに入り、内野手のサインが出終わったあとくらいのタイミングから、モーションに入るまでの間に徐々にリードを広くしていくと効果的だと解説しました。これに補足すると、バントの気配もないのにライン上にリードを取ると「走るのか?」と勘づかれてしまいますから、リードのし始めはやや後ろにリードを取っておいて野手を惑わしつつ、最後は右斜め前にサイドステップでライン上に近い位置まで移動してあげるといいでしょう。
ただ、これらはあくまでも基本的な考えで、私はめいっぱい後ろに膨らむことはせず、バント以外のどのケースでもやや後ろめにしていました。「盗塁もあるぞ」とあえて野手に考えさせたかったですし、実際に盗塁なら徐々に前に出てライン上に移動し、それ以外ならばシャッフル(第2リード)で後方に膨らむようにしていました。アレンジは自由だと思います。
●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に
巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。
『週刊ベースボール』2019年12月23日号(12月11日発売)より