
10年前の春。センバツ甲子園で敦賀気比高・吉田正尚(現オリックス)は2年生四番として、チームを8強進出へと導いている
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、センバツ高校野球は史上初の「中止」。春の公式戦も各地区で中止が相次いでおり、夏の都道府県大会の開催も不透明の状況である。
かつて球春を彩った、高校球児を回顧する。
十年一昔と言われるが、2010年春のセンバツで、注目2年生スラッガーとして脚光を浴びたのが、敦賀気比高・吉田正尚(現オリックス)だった。
前年夏、つまり1年夏の甲子園でも四番を張った左の強打者。天理高(奈良)との開幕試合で3安打を放つと、花咲徳栄高(埼玉)との2回戦では適時二塁打。フルスイングした打球が、あっという間にセンターの頭上を破る、驚愕の弾丸ライナーであった。
当時の登録は171センチ70キロと小柄な部類に入るが、実際には大きく見えた。打席でのオーラがあったのである。2年生のバットが8強へ導くも、準々決勝では、のちにオリックスでチームメートになる日大三高の左腕・
山崎福也の前に3打数無安打。チームも散発3安打に抑え込まれ、0対10で涙をのんでいる。
1年夏から3年夏までフルの「5季連続甲子園」が目標だったが、結果的に残り3回はそのチャンスを逃している。同春のセンバツアンケートの趣味の欄には「TEL」と書いてあったのが気になった部分。野球以外の特技は「バドミントン」で、好きな野球選手は「
村田修一、
高橋由伸」。そして、将来の夢は「プロ野球選手」だった。青学大を経て、オリックスから1位指名。有言実行の男である。
文=岡本朋祐 写真=BBM