本塁打を放ったものの、なんらかの理由でその本塁打が「取り消し」になったり、野球規約によって「二塁打」に変更されたりするケースがある。走者がベースを踏み忘れたり、観客の妨害があったりと理由はさまざまだが、今回は特に印象的だった「幻の本塁打」をピックアップして紹介する。
ミスターの珍事から物議を醸した騒動も
●ルーキー初のトリプルスリーを逃した長嶋のベース踏み忘れ
1958年9月19日の
広島戦(後楽園)で、当時ルーキーだった長嶋茂雄が一塁ベースを踏み忘れ、本塁打を取り消されている。この年、長嶋は打率.305、29本塁打、37盗塁と好成績を残したが、本塁打取り消しがなければ30本塁打に達し、NPB初となるルーキーによるトリプルスリーを達成していたはずだった。そう考えると、最も「後世に名を残した」本塁打取り消しだった。
●取り消しがなければNPB通算10万号は
T-岡田だった……
2017年9月29日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で、
オリックスの
クリス・マレーロがシーズン19本目の本塁打を記録。これはNPB公式戦通算10万号というメモリアルアーチでもあった。しかし、ある事件がなければNPB通算10万号は別の選手だったかもしれないのだ。実は同年6月9日の
中日戦(京セラドーム)で、マレーロは三塁ベースの踏み忘れで本塁打の取り消しとなっている。もしこの取り消しがなければ、ロッテ戦でのマレーロの本塁打は10万1号目。マレーロの前に9万9999号を打っていたチームメートのT-岡田が10万号になっていたはずだった。
●NPB史に残る本塁打打球の「たたき落とし」
1995年6月20日の横浜対
阪神戦(横浜)では、スタンドにボールが入る前に観客の妨害によって打球がたたき落される事件が起こった。9回、1点を追う阪神は、七番の
新庄剛志が
佐々木主浩のボールをレフト方向に打ち返す。同点本塁打と思われが、スタンドインする手前で阪神応援団の旗に当たりフィールドに落下。野球規約により二塁打とされてしまった。新庄は
日本ハム在籍時の2004年にも、ボールがスタンドに入る前に観客がキャッチしてしまい、二塁打に変更されている。

劇的な満塁弾を放った新庄だったが……
●前の走者と抱き合って「追い越し」判定
新庄は観客による妨害以外にも、2004年9月20日のダイエー戦(札幌ドーム)で「走者追い越しによる本塁打取り消し」も受けている。12対12の同点で迎えた9回裏、二死満塁で新庄が放った打球はレフトスタンドに入り、劇的なサヨナラ満塁本塁打となった。しかし、先を走っていた
田中幸雄と抱き合った際に新庄が田中より先に出てしまい、これが「走者追い越し」と判定されてまさかの本塁打取り消しに。ただ、三塁走者が先にホームインしていたことからサヨナラは認められた。
●疑惑の判定だった小関の踏み忘れ事件
2006年6月11日、ロッテ対巨人戦(千葉マリン)で打者ではなく走者の「三塁踏み忘れ」による本塁打取り消しが起こった。1対1と同点の3回表、巨人の四番イ・スンヨプがロッテの
渡辺俊介から勝ち越しとなる2点本塁打を放つが、走者だった
小関竜也が三塁を踏まずに通過したとして、本塁打が取り消されることになった。巨人サイドは三塁を踏んでいるとして猛抗議したが判定は覆らず。後に球団からセ・リーグに対して抗議文が送られることになった。当日のスポーツ番組でもこの問題は大きく取り上げられ、VTRによる検証が行われるなど物議を醸した。
印象的だった「幻の本塁打」を紹介した。2017年のマレーロ以降は本塁打の取り消しや二塁打への変更といった騒動は起こっていないが、例年とはまったく異なる今シーズンだけに何が起こるのかは分からない。もしかすると、2017年以来3年ぶりの珍事が飛び出すかも……?
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM