西武が「プロ野球選手1年生のきみへ」と題して、育成アマチュア担当(スカウト)から今年のルーキーたちに宛てた“手紙”を公開。各担当から見た選手たちは“子ども”、選手たちから見た各担当は近くで見守ってくれる“親”のような存在だが、この状況下で直接会話をできない日々が続く。その中で、各育成アマチュア担当たちが各選手に対して“今伝えたい想い”を綴ろうと筆を執った。最終回は、竹下潤育成アマチュア担当からドラフト1位・宮川哲投手に宛てたものを公開する。 西武・宮川哲(球団提供)
哲へ
元気ですか? そして自粛していますか?(笑)
大会で先発している姿を見て、哲がどんな練習をするタイプか、どんな性格なのか知りたくなってグラウンドに行ったのを覚えています。
哲は先発で完投できる能力があるし、ボールに力があって、変化球の精度が高く、短いイニングでも爆発的な力を発揮できる。そう思うから、哲にはライオンズの先発陣の中に割って入って、その一角を担うピッチャーになってほしい――。
昨年のドラフト会議の時、哲の指名がジャイアンツと重複した時に、「なんとか引き当ててくれ」と俺たちスカウトが待機する控室の中でじっとテレビを見つめていたのが懐かしいよね。だからこそ、辻監督が引き当てた瞬間は本当にうれしかったなあ。
一見話しかけづらそうなところがあるけれど、芯は通っているし、動じない。人懐っこくて天然で、そんな好かれるタイプの哲をあんまり心配してはいないけど、この機会だ。伝えたいことがある。
いまだからできること、それをしっかり考えてほしい。練習はもちろんだが、寮の中でも哲は年上の方だ。高卒やそれに近いルーキーたちは、今、不安を抱えていることも多いだろう。高校から社会人まで厳しい環境を過ごしてきた哲は、彼らと同じルーキーではない。長い寮生活で時間の使いかたもわかっているはず。ちょっとだけ“大人”の哲が、そんな彼らの不安を取り除いてやってくれよな。
少し出遅れたけど、開幕に間に合うことができてホッとしているよ。地元の両親の為にも育ててくれた母校や監督さんのためにも、ライオンズの希望の光である哲には、世の中をパッと明るくするような、そんな豪快なピッチャーになってほしいんだ。
埼玉西武ライオンズ育成アマチュア担当
竹下潤(13年目、担当地区:関東、主な担当選手:2018年
齊藤大将投手)
宮川哲からの“返信”
竹下さんからの手紙を読んで、期待に応えられるよう頑張らないといけないな、と改めて気が引き締まりました。
僕はけっこうな人見知りですが、竹下さんはとても気さくで話しやすく、初対面のときからたくさん話ができたことを覚えています。ドラフト会議が終わってからもずっと気にかけてくださって、新人合同自主トレから南郷春季キャンプの時も、フォームを見てもらったりキャッチボールの相手をしてくれました。
僕は球の感触を確かめたくてよく遠投をしますが、「投げるならいつでも言ってこいよ!」といつも気にかけてくださって感謝しています。
自主練習期間中もシート打撃で登板した映像を見てくれたりしましたが、竹下さんとは野球以外の生活面でも色々な話をします。
今年のキャンプ中、自分の中で焦りがあった時がありました。そんなときに「自分を持ってやれよ」と言ってもらったときは気持ちがスッと落ち着いたのを覚えています。
いつも甘えてばかりですが、しっかりと恩返しができるよう1日1日を大切にしていきたいと思います。
埼玉西武ライオンズ
宮川哲
西武ライオンズ