一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 阪神・高山が蒸発
ホームランを打った松原を出迎えるワーハス
今回は『1971年8月23日号』。定価は100円。
同じ号から3回目。
大洋はバタバタしてきた。
序盤は2位にも立ったが、5月末から急失速で最下位に。それが球宴明けは課題の打線が活性化し、徐々に勝ち始めた……。
と、チーム状態はよくなり始めたのだが、
別当薫監督の顔が渋い。
実は、自分に相談なく
宮崎剛がヘッドコーチに返り咲くなどコーチ陣がいじられたことに加え、
青田昇が球宴ブレーク中の臨時コーチに就くなど、中部オーナーが勝手なことをしていたからだ。
中部オーナーは「ワーハスが来年も使ってほしいと泣き込んできたんだ。そこに青田君がいたので一度見てもらったらと進めたのだ」と説明する。
期待されて入り、開幕戦は四番も打ったワーハスだったが、以後、まったく打てなくなった。
青田の指導は2回。1回目はワーハスを、
金光秀憲コーチを追い払ってアドバイス。
2回目はチームの全体練習の前にワーハスだけではなく、
松原誠、
長田幸雄、
近藤和彦ら主力選手をこっそり指導し、かん口令まで敷く徹底ぶり。ただ、それでも球界は不思議と情報がもれる。
別当は、これを聞き、激怒した。
「優秀なコーチに見てもらうことはいい。が、責任者の僕が立ち合い、相談し、議論しながらやってほしかった」
新聞では「次期監督に青田氏が濃厚。別当監督は休養か」とも書かれた。
結果的にこの後、打線が急上昇。中部オーナーも上機嫌で8月2日の激励会では、まだ最下位ながら、
「Aクラスだなんて言わないで、優勝だよ。優勝するには、まだ8敗もできるんだ」
と言った。残り50試合近くあり、首位
巨人には10ゲーム以上の差、あと8敗で自力優勝がなくなる展開だったようだが、さすがポジティブ。
実際、翌日からの巨人戦が3連勝。14日には巨人が独走で2位以下が混沌状態とはいえ、2位に浮上したのだからすごい。
中部オーナーは
「青田効果? いやショック療法だよ」
と言っていたが、別当監督の顔は曇る一方だった。
ウエーバー会議(二軍選手に対するドラフトのようなもの)で
ヤクルトから移籍してきた
阪神・
高山忠克が8月4日、コミッショナーから無期限失格選手となった。
高山は7月14日に寮から“蒸発”。ギャンブル好きで有名だった。
この件はまた次回で。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM