2018年に開催された第100回夏の甲子園大会準々決勝。当時、近江高(滋賀)2年生だった林優樹は
吉田輝星率いる金足農高(秋田)との一戦で4回途中から登板した。しかし、“悪夢”が襲う。2対1と1点リードで迎えた9回裏、逆転サヨナラ2ランスクイズを決められ、マウンド上でヒザに手を当て中腰になり動きが止まった。メンバーに支えられベンチに戻るも涙が止まらない。
「この試合に負けた日から始まった1年でした。何としてでも自分が甲子園にメンバーを連れて行くぞという思いと、必ずあの場所に戻らないといけないという気持ちしかなかったです。翌年に再び甲子園のマウンドに立ったときは、鳥肌が立ちました」とあの夏を振り返る。
近江高卒業後、今年から西濃運輸(岐阜)に所属し、プレーを続けている林。ゆったりとしたフォームから、キレのいいストレートを投げるのが特徴で、最速は136キロだが制球力は高い。
「自分は160キロを投げる投手ではないので、コントロールを良くして打たせて取るピッチングを持ち味にしています。高校時代の監督から、キャッチボールをおろそかにする投手は上の世界では通用しないと言われていたので、社会人でもこの意識は大切にしていきたいです」

投球練習をする林
新型コロナウイルスの影響もあり全体練習に時間が費やせない分、課題でもあった体づくりに専念した。その甲斐あってか、入社時174センチ64キロだった体重は3カ月で7キロ増量。取材時は、高校時代の小柄な印象から、少しガッチリとした姿に変わっていた。
「1年かけてやろうとしていたことを達成できたので、体づくり以外の目標にも目を向ける余裕ができました。本来ならシーズン中ですが、トレーニングに集中することができたので、長かった自粛生活もプラスにとらえています」と9月15日からスタートする都市対抗野球予選に向けて、期待の技巧派左腕は前向きな笑顔を見せてくれた。
林優樹(はやし・ゆうき)
2001年10月29日生まれ。京都府出身。174センチ61キロ。左投左打。テンポ良いピッチングが特徴で、チェンジアップのキレは抜群。近江高校時代はU-18代表にも選ばれた期待の技巧派左腕。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップ。
豊島わかな
1986年12月14日生まれ。愛知県出身。2017年から日本野球連盟公式サポーターを務め、社会人野球の魅力を伝えている。
文=豊島わかな 写真提供=西濃運輸