一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 中村オーナーはラッパ2世?

太平洋クラブ時代の中村氏
今回は『1971年11月15日号』。定価は90円。
10月29日、羽田空港に降りた
ロッテ・中村長芳オーナーの気宇壮大なラッパが鳴り響いた。
岸信介元首相に同行して渡米し、アメリカのファーム球団を買収したという話はすでに日本に伝わっており、この日もロビーにぎっしりと記者が詰めかけていた。
中村オーナーの第一声は、
「ローダイ・パイレーツを買収しましたよ」
だった。ローダイはアメリカのカリフォルニア・リーグ(A級)のチームでパドレスのファームだ。しかし、この街の人口がおよそ3万人と少なく、成績もリーグ最下位の常連。積もり重なる赤字についてパドレスも悩んでいたという情報をキャピー原田から聞いていた中村オーナーが一気に買収に動いたわけだ。
ただ、ローダイが本拠地のままでは厳しい。ロッテの親会社のアメリカ進出をバックアップしていたバンク・オブ・アメリカを後ろ盾にし、サクラメントに本拠地を移し、名前も「サクラメント・オリオンズ」にして、球場はこれもバンク・オブ・アメリカの支援で73年までに完成させる予定だという。
すごい話なのだが、球団買収の費用は1000万円とも噂され、要は二束三文でつぶれかけた球団を拾った形だった。
それでも絡んでいるのが、岸元首相、ロッテ、バンク・オブ・アメリカだ。何か一儲けをたくらんだのかと勘繰りたくなるが、詳しいことは書いていないので分からない。
これを聞いた
大沢啓二監督は、「ありがたい。まずはファームの選手を何人か留学させたい」と話していたが、中村オーナーは「日本のドラフトで目いっぱいの選手を獲ったうえで国際トレードを行い、アメリカに選手を送り込みたい」とも言っていた。
もう一つ、これも73年からだが、サンフランシスコ・ジャイアンツと毎年3月に親善試合をという構想も発表。場所はハワイのホノルルで5年継続する約束をした、という。
まさに前オーナーの永田雅一のようでもある。
あと、ちなみにだが、「モーレツ」は当時のタイトルにあったもの。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM