
NTT東日本・大竹飛鳥
若手選手の台頭が目覚ましい社会人野球界の中で、長年チームをけん引し続けている選手がいる。NTT東日本のベテラン右腕・大竹飛鳥だ。コロナ禍により、練習ができなかったことに焦りを感じたと話す若手選手がいる中で、「自分の時間が増えていいリフレッシュ期間だった」と、余裕の笑顔を見せてくれた。
今年35歳になる大竹は、愛知高卒業後、関東学院大に進学。大学入学と同時に遊撃手から投手へと転向し、その後NTT東日本に入社した。昨年の都市対抗予選の東京第二代表決定戦、明治安田生命との一戦では14三振を奪い、1対0で勝利。自身初となるノーヒットノーランも達成している。
今でこそ、チームの精神的支柱として存在感を発揮している大竹だが、入社から4、5年目は投げたら必ず打たれるスランプ期だったと話す。当時、野球人生に終止符を打たなくてはならない危機に直面していたが、野球を続けたいという気持ちが強く、練習後に毎日追加で50球ほど投げ込んだ。このハードな練習スタイルが大竹には合っていたようで、その後は結果が追いついてきた。今でも春のキャンプでは、2週間で1000球以上の投げ込みをしているという。
根気強く続けることの大切さを語る大竹に、衰えることなくプレーし続けられている秘訣を聞いた。
「ベテランと呼ばれる年齢までプレーができているのは、うまくモデルチェンジができたことか、と。若いころは速い球が投げたいとか、空振りを取りたいとか、いろいろな思いがありましたが、年を取るとそれが難しくなる。そこに執着しないで、素直に今の投球スタイルに変えられたことが、長くやれている秘訣かと思います。あとは大きなケガをしなかったことも大きいです」
どんな試合でも、冷静沈着に見える大竹だが、実際のところは自分の登板が回ってくると、抑えて当たり前という周りの期待から、プレッシャーを感じるときもあるそうだ。
「打たれたらいけないと思い込んで緊張してしまい、登板前はいつも気分が乗らないです(笑)。ただ、プレッシャーを感じてはいますが、つぶれそうになったことは今までないです。気持ちの部分でつぶれそうになったときは引退かな、と。今の目標は40歳まで投げ続けること。若い選手には負けられませんね」
年齢を重ねるごとに輝きを増していく大竹は、大きな目標を胸に、都市対抗の大舞台での活躍を誓った。
大竹飛鳥(おおたけ・あすか)
1985年7月10日生まれ。愛知県出身。173センチ86キロ。右投右打。高い制球力を誇るベテラン右腕。変化球はスライダー、フォーク、ツーシーム。
豊島わかな(とよしま・わかな)
1986年12月14日生まれ。愛知県出身。2017年から日本野球連盟公式サポーターを務め、社会人野球の魅力を伝えている。
文=豊島わかな 写真提供=NTT東日本