新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった今年3月のセンバツ出場32校の「救済措置」として甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」。今夏は地方大会と全国(甲子園)も中止となった。特別な思いを胸に秘めて、あこがれの舞台に立つ球児や関係者たちの姿を追う。 「丁寧に捕球しました」

背番号19以降で、甲子園で初めて試合出場したのは花咲徳栄高・横溝。ウイニングボールを手にし、大分商高に勝利した後の校歌は格別であった
2020年甲子園高校野球交流試合のベンチ入りは従来から2人増の20人。つまり、春、夏の甲子園大会を通じて初めて「19」と「20」がグラウンドに立った。8月10日の大分商高と花咲徳栄高による開幕試合。「19」以降で試合出場を遂げたのは、花咲徳栄高の背番号19・横溝文太(3年)が初めてだった。
攻撃中は三塁コーチ。花咲徳栄高が3対1とリードして迎えた9回表、右翼の守備に入った。大分商高は二死走者なしから右飛と、横溝が最後のウイニングボールを手にしている。
「風が強かったので、丁寧に捕球しました」
1年夏、2年夏の甲子園は控えで、アルプススタンドでの応援組。昨秋の埼玉県大会では「19」、関東大会では「18」を着けた。そして、今夏の埼玉県高野連が主催する独自大会も「19」。交流試合ではこれまでの甲子園大会から選手登録2枠増により、全国舞台でプレーするチャンスに恵まれたのである。
「ベンチに入れたことに感謝。勝つことを目標にやってきたので良かったです」
花咲徳栄高が3対1で勝利。ウイニングボールを握り締めた勝利の校歌は格別だった。しかし、通常とは運用が異なり、本塁付近で十分な距離を取った上で、聞くのみであった。
「大きな声で歌いたい気持ちはありましたが、こういう状況なので仕方ない」
特別なウイニングボールは岩井隆監督に手渡した。「岩井監督のおかげで野球ができた。感謝したいです」。甲子園での交流試合を終えたが、花咲徳栄高の夏はまだ終わっていない。独自大会の東部地区初戦(2回戦、対春日部工高)は8月12日に控える。
「最後まで野球ができることに感謝したい」
2020年夏、背番号19は仲間とともに完全燃焼するつもりだ。
文=岡本朋祐 写真=写真=牛島寿人