もう椅子は準備されていない

決して打撃センスは悪くないのだが
最初に言い訳させてほしい。
この原稿を書いた後、ネット記事を眺めていたら、今回と同じテーマで、オチが近い記事があった。真似したと思われるのもしゃくだったんで、担当編集者には「ボツにしてもいいよ」と言ったんだが、「せっかく書いてもらったんだから、もったいないし、載せます」と言われてしまった。
目新しさがなかったら、ご勘弁を。
テーマは二軍でくすぶっている
巨人の二枚目男・
小林誠司だ。骨折で二軍落ちしたが、今は回復し、実戦復帰もしている。ただ、なかなか一軍からお呼びがかからない。
はっきり言って、これが椅子取りゲームなら、あいつにもう席は残っていない。
大城卓三が打撃好調を維持し、
炭谷銀仁朗はリードがしっかりしているし、打撃もしぶとい。
岸田行倫には若さと、こちらも打撃力がある。
誠司がこの3人以上に持っているのは、肩と、肩と……あとは顔か。
女性ファンはみんな待っていると思うが、果たして、
原辰徳監督が待っているかどうかは分からない。
今やセも捕手が打てなくても構わないという時代ではなくなった。特にそれを進めているのが、大城を前面に出している巨人だ。
原監督の中では捕手は守備を普通にこなし、さらに打ってくれ、という思いがあるはずだ。
小林は今、二軍で捕手としての実戦勘を取り戻そうとしているようだが、相変わらず打撃は今一つ。それで、この3人の上に立てるのかと言えば、たぶん無理だ。
俺は今、誠司は思い切った発想の転換が求められていると思う。
バッター・小林を磨くことだ。今の巨人は独走状態。小林を一軍に上げることはあるだろうが、「待ってたぞ、誠司!」にはならないだろう。
ならば、ファームでじっくり打撃を鍛え、来年に備えてもいいんじゃないかな。
31歳が遅いというかもしれないが、俺はそうは思わない。
カープ時代の
高橋慶彦さんを見ているからだ。プロ9年目、26歳で思い切ったモデルチェンジを果たした人だ。
慶彦さんは投手で入団し、内野手に転向。スイッチヒッターを死ぬ気になって磨き、79年には33試合連続安打の日本記録をつくった。
自分の立ち位置みたいなものは確保したわけだ。
当時の慶彦さんは、左は特に上からたたきつけるダウンスイングで、はっきり言えば、ボテボテでも足を生かし、ヒットにしていた。
ただ内心、このままだと終わってしまうという危機感があったらしい。足が速いうちはいいが、年齢で足が衰えたら、どうすりゃいいんだって。
このとき出会ったのが、
山内一弘さんだ。慶彦さんは、山内さんと一緒に根本からスイングを作り直した。ダウンスイングからへその回りで平行に振る、いわゆる、へそ打ち打法に変えた。狭い
広島市民もあってだが、これでホームラン激増した。
誠司に関しては、あいつが入ってきたころから知っている。いいやつだし、応援したいんだ。
誠司、二軍には
阿部慎之助もいる。ここは騙されたと思って打撃を鍛え、打てるキャッチャーになって帰ってこいよ。
原監督を見返してやれ!
写真=BBM