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高校野球リポート

神奈川の地区予選がリーグ戦からトーナメントになった理由は?

 

文武両道の基本理念


神奈川県秋季県大会は9月12日に開幕。県高野連主催の夏の独自大会に続き、新型コロナウイルスの感染予防対策が講じられ、生徒の安全を最優先に、試合は粛々と進行している


 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、今年の高校野球は異例のシーズンとなった。センバツ大会中止、春の公式戦も準々決勝まで開催された沖縄を除き中止。さらには夏の地方大会、全国大会(甲子園)の中止を受け、全国47都道府県高野連が主催する地方大会に代わる「独自大会」が49地区で行われた。

 3年生に練習の成果を発揮する「最後の夏」「一区切り」のステージが用意されたのである。また、センバツ出場32校に対しては、甲子園に招待する「2020年甲子園高校野球交流試合」が開催。各校1試合、あこがれの地・甲子園でプレーする場が提供された。

 神奈川県高野連が主催する「独自大会」が終了したのは8月23日。埼玉と並び、全国で最も遅かった。閉幕も束の間、29日には2年生以下の新チームによる地区予選が6地区で始まった。例年は原則、4校でリーグ戦を行い、上位2校が県大会へ進出する。しかし、今回は原則4校によるトーナメントで、1校が県大会出場。昨年は75校で秋季県大会が行われたが、今年は43校となっている。

 地区予選がリーグ戦ではなく、トーナメントとなった理由はなぜか。文武両道という、学生野球の基本理念がある。4月から続いた臨時休校により、夏休みが短縮され、すでに8月下旬からは多くの学校で授業が始まっていた。昨年は北相地区の8月16日を皮切りに、17日からは残りの5地区も予選が開幕。だが、今年はスケジュールがずれ込み、さらには学校再開により、土、日しか試合が組めない日程上の事情が発生した。県大会開幕(9月12日、当初の予定では5日)を逆算すると、原則4校によるリーグ戦は難しくなった。

「秋の公式戦が1試合という学校もあり、プレーする機会が減る形となった。こういう情勢下であり、生徒には申し訳ない」(神奈川県高野連・栗原豊樹専務理事)

 夏に続き、秋の県大会も無観客試合で、控え部員以外の入場はできない。主催者側は何よりも、生徒の安全を確保する必要がある。夏の独自大会と同様、万全の感染予防対策が講じられ、厳戒態勢が続いている。大会運営側としては、決して気を緩めることはない。

「夏の(独自)大会が終わった後にメディアの方から『ホッとしましたか?』という質問があったのですが、『ありがたい、しかない。好意、思い、協力に支えられた』と答えさせていただきました。加盟校はもちろんのこと、膨大な試合数(172試合)をすべて公営球場で開催することができたのも、各球場の管理者、他の団体のご協力があったからです。(本来であれば7月開催で)8月は球場を抑えていなかったわけですので、感謝に堪えません」

「力を合わせて、やり抜く」


 だからこそ、あらためて強調したいことがある。

「(大会の)機会は無条件に与えられるものではないということを、生徒は重く感じてほしいです。各方面のさまざまな協力、理解があり、支えられているという事実を受け止めた上で、日常の生活から自ら対策を取って、気を引き締めて大会に臨んでほしいと思います」

 1日も早く本来の形に戻したい。「皆さんに見ていただきたい」(栗原専務理事)という思いはあるが、終息の見通した立たない段階においては、安易に「有観客試合」には踏み切れない。何を、優先事項に持ってくるのか。言うまでもなく「試合開催」が最優先となる。

「力を合わせて、やり抜く」

 現場を取り仕切る栗原専務理事はあらためて、襟を正した。決勝は9月27日に予定される。大会に携わる県高野連の先生方と一枚岩になって全42試合、緊張感を持って運営に当たる。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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