一番大きな拍手

昔のオーラが戻ってきた
9月27日、ZOZOマリンで
ロッテ─
ソフトバンク戦の解説をした。
マリンに行って一番、驚いたのが、あいつが出てきたときの歓声、いや拍手だ。間違いなく、一番大きかった。
澤村拓一。あいつ、マリーンズファンの心をしっかりつかんだようだね。
巨人時代の後半は登板すると客席から「大丈夫か」みたいなどよめきが起こったが、まったく違う。
マウンドでも堂々とし、昔みたいなオーラを出していた。
巨人から突然の移籍でロッテ入り。入団会見の日から登板し、その日まで6試合連続無失点。
ただ、俺は半信半疑だった。いつかまた、悪い澤村が出てくんじゃないか、それが俺が球場に来たきょうかもしれない、と……。
それが危なげなく7試合連続無失点。
高速スプリットはえげつないし、フォームも悪いときは体が打者側に向かっていかず、三塁側に倒れ、球がシュート回転するが、それが修正できていた。
というか、あれはホントに澤村か。双子の兄貴じゃないのか。
いや、それは冗談だが、孫と一緒に見ているテレビのヒーローみたいに、明らかに変身していた。
澤村が巨人に入ったとき、俺はコーチだったが、少なからず緊張した。ドラフト1位だし、名前がまさに巨人のエースだから、何とか大きく成長させなきゃいけないなって。
まあ、そんな素直な男じゃなかったから、腹が立つこともあったが、思い入れが強い選手ではある。
巨人時代後半の澤村は、とにかくストレートばかり。あとは曲がらないスライダー、打者に見切られるフォークも時々投げていたが、最後はやっぱりクビを振ってもストレートで、それを相手のバッターも分かっていた。
それでも真っすぐに威力があれば抑えられたが、少しでも球威が落ちたら、粘られて四球か、ムキになって投げ込む甘い球を打たれる。はっきり言えば、やられ方がワンパターンだった。
それが今は真っすぐは球速、キレもあるし、高速スプリットも威力がある。ほされていた時期、二軍で秘密特訓でもしていたのかな。
考えてみると、パのバッターは多少のボール球でもどんどん振ってくるから、澤村向きなのかもしれないね。
澤村の兄貴、いや、変身した澤村がこれからどんな活躍をするのか楽しみに見ていきたいと思う。
……と書いて編集部に送ったら8試合目に失点か。澤村、気持ちを切らすなよ。踏ん張りどころだよ。
写真=BBM