昨年の悔しさを晴らす

4年連続都市対抗出場を決めた東邦ナイン
第91回都市対抗野球大会東海地区二次予選は10月4日、18日間にわたる熱戦を終え、6代表が東京ドームへの出場を決めた。
東邦ガスはジェイプロジェクトとの第4代表決定戦を制し、4年連続14回目の出場である。
山田勝司監督は「楽な試合はなかったが、7試合を通して選手たちが成長している姿を見ることができて良かった」と安堵した表情で、厳しい予選を振り返った。
トヨタ自動車との第1代表決定ゾーン1回戦を、2対9で敗退する苦しいスタート。第3代表決定ゾーンでは2試合を勝ち上がるも、第3代表決定戦進出をかけた3回戦で三菱自動車岡崎に敗退(1対5)した。
第4代表決定ゾーンへ回った際、山田監督から捕手に起用されたのは、入社2年目の八番・氷見泰介だ。地元・愛知の豊川高を卒業後、明大でプレーし昨年、東邦ガスに入社した。普段は温厚で優しい性格の氷見だが、マスクをかぶると豹変する。グラウンドでは、負けず嫌いを前面に出す。
昨年の都市対抗。パナソニックとの2回戦で終盤に逆転を許すと、そのまま1対2で初戦敗退した。氷見はこの試合、捕手を任されていた。
「昨年の悔しさを忘れずに、この1年を過ごしてきました。都市対抗でもう一度マスクをかぶりたいという思いで練習を重ね、悔しさを晴らすのはドームしかないと思っています」
話を第4代表決定ゾーンに戻す。東邦ガスは永和商事ウイング、西濃運輸を下して、ジェイプロジェクトとの第4代表決定戦を迎えた。初回に東邦ガスが5点を先制し、有利な試合展開ではあったが、勝負はどちらに転ぶか分からない。
8年ぶりの出場を目指していたジェイプロジェクトにも、意地があった。5回裏の相手攻撃で、試合の流れを持っていかれそうなシーンが見られた。
この場面、氷見はマウンドの水田裕に何度か駆け寄り、明大の先輩でもあるエースを鼓舞。
「あのときは、楽にいこう! と。主導権を渡してからでは、手遅れになりますので……。ああいうピンチでは、落ち着くような言葉をかける。高校時代のコーチに指導されて以降、試合で実践しています」
この窮地を脱すると、氷見は7回には左前適時打。2安打2打点とバットでもチームの勝利(7対2)に貢献した。
出場切符も通過点にすぎない。氷見は表情を引き締める。
「昨年の悔しさを東京ドームで晴らせるよう、本戦(11月22日開幕)までの期間を大切に過ごし、万全の準備をしていきたいです」
本戦でも攻守のキーマンとなりそうだ。
文・写真=豊島わかな