チームの原点はハングリー精神

8年ぶり2回目の都市対抗出場を決めたジェイプロジェクトナイン
愛知県名古屋市を本拠地とするジェイプロジェクトは、8年ぶり2回目の都市対抗出場を決めた。名古屋市内を中心とした飲食店を展開する企業チームである。
チーム創設は2009年。練習グラウンドも所有していない。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、会社の業績面でも影響が出た。4月3日、トヨタ自動車とのオープン戦を最後に、6月30日まで活動を自粛。緊急事態宣言の発令により、選手が勤務する飲食店の多くが休業に追い込まれた。
株主総会では野球部の活動に対する厳しい意見も出たが、新田治郎代表取締役は涙ながらに声を上げた。
「それでも野球を続けたいと主張したのは、ここで選手たちがひたむきに頑張る姿が、全社員の励みになると思ったから。実際に今回の二次予選では、彼らから勇気をもらいましたし、絶対にあきらめないことの大切さを学びました。社業は本当に苦しい時期ですが、今回の出場は初出場のときよりもうれしいです」
ハングリー精神が、チームの原点にある。
「グラウンドがなくても。道があれば走れる。ボールがあれば、キャッチボールができる」
泥臭さが持ち味だ。第5代表決定戦を含め、勝利した4試合のうち3試合がサヨナラ勝ち。「ウチらしい勝ち方」と選手たちは口をそろえた。
三菱自動車岡崎との第5代表決定戦(10月3日)では、1点を追う9回裏に四番・田中鳳真が中前打を放ち試合の流れを変えると、一死一、三塁の場面で、相手投手の暴投で同点。押せ押せムードとなり、最後は七番・林田竜郎のサヨナラ犠飛(3対2)。劇的な形で代表権を手にしている。
この試合、完投した右腕・白崎塁は顔をクシャクシャにさせながら言った。
「9回裏、田中がヒットを打った瞬間、涙で何も見えなくなりました。最後まで絶対に負ける気がしなかったので、興奮と感動で、何も覚えていない。それくらいうれしかったです。ベンチからはいつも大きな声が聞こえ『うるさい!』と冗談で言ったりもしていますが、マウンドでも、一人ではないと感じることができているので、本当に心強いです。この苦しい状況でも野球をやらせてくれた会社と、こんな僕でもエースとして信頼してくれている仲間に恩返しする気持ちで投げました」
練習再開から2カ月弱で本戦出場を決めたジェイプロジェクトには、不屈の魂がある。
「弱いチームですけど、何か持っているチーム」。新田代表取締役が言う、最後まで粘り強く戦うスタイルを、全国舞台でも展開する。初出場だった8年前は優勝したJX-ENEOSに1対2の惜敗。二次予選同様、泥だらけになって、悲願の初勝利を全員でつかみにいく。
文・写真=豊島わかな