絶妙なアメとムチ

厳しい視線をグラウンドに注ぐ阿部二軍監督
巨人二軍
イースタン・リーグ3位
79試合38勝33敗8分、勝率.535
「嫌われてもいい。そうでなきゃいい選手は出てこない」
今季より就任した
阿部慎之助二軍監督の覚悟だ。常勝軍団復活を願うからこそ、「毎日、何らかの“圧”をかけていきますよ」とスパルタ指導を予告。注目を集めた春季キャンプでは、自らノックバットを握り、1日300球以上を打つ日も珍しくなかった。昭和を感じさせるスパルタ指導に見えるが、アメとムチも絶妙で、ヘトヘトに疲れている選手の表情には、充実感も漂った。“二軍改革”を進め「一軍と同じ量をやっていても、いつまでも追い越せない」と効率化を徹底、例年以上の練習時間でチーム力の底上げを図った。
開幕が6月に延期されるイレギュラーなシーズンとなったが、高卒1年目捕手の
山瀬慎之助、
増田陸や
湯浅大ら野手、投手では
直江大輔、
沼田翔平、
横川凱ら20歳前後の若手に積極的に実戦経験を積ませた。その一方で、中堅選手の再生にも尽力する。序盤は二軍だった
今村信貴はその後、一軍で5勝を挙げるが、「曲がりを小さく球速を速く」とカットボールの助言をくれた阿部二軍監督への感謝を口にしている。
元木大介一軍ヘッドコーチが入院した際には、阿部二軍監督が一軍でヘッド代行を務めたが、このときに活躍したのも二軍生活が長かった
田中俊太であり、
立岡宗一郎だった。
イースタンでは3位に終わったが、一軍への戦力供給と来季以降に向けた楽しみな若手も台頭。阿部二軍監督1年目のファームは大きな成果を上げたといえる。
写真=BBM