一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 ドクターストップも気にせず

大洋・小谷(写真は1971年)
今回は『1972年5月8日号黄金週間特大号』。定価は120円。
1970、71年と2年連続でセ・リーグ最多登板を果したのが、大洋・
小谷正勝。71年はリリーフメーンながら11勝を挙げ、イニングも148回。
「太陽が出ない日があっても小谷の投げない日はない」
と言われ、スタミナ満点で「関取」の異名もあった。
その小谷が71年暮れ、病院に向かった。体にむくみが出て、疲れやすくなったからだ。
医師の診断は「肝臓肥大」。「刺激物およびアル
コール」と「過激な運動」を禁止した。
このとき、医師は登板も禁じようとしたようだが、これは小谷が拒否。自身で、さまざま試すうち、1日、ブルペンも含め80球が限度と判断した。そのうえで「深刻に考えないようにしています。悪けりゃやめるだけですからね」と開き直った。
しかし、4月19日の
巨人戦(後楽園)では無死満塁のピンチから登板し、4イニングを投げた。球数は80球を遥かに超えた。
「別にどうってことない。マウンドに上がれば打者以外のことは考えないから。これだけ投げられたら、まあ、いいでしょう」
小谷は涼しい顔で、そういった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM