読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.ゴロを捕るとき、平野謙さんは利き手側の足を出して捕球するという記事を読みました。ウチのチームでは、反対側、グラブを持った側の足を出すように言われましたが、どちらが正しいのでしょう。(愛知県・17歳)
A.スローイングの反動をつけるために体をねじることはNG。送球の精度を上げるには、顔をしっかり投げたい方向に向ける 
外野手は捕った後に、いい送球をするのが重要だ
3回目です。話が“足の出し方”から進み過ぎたかもしれませんが、一連の流れとして読んでいただければと思います。今回はステップとスローイングの話をします。陥りやすい間違いとして、投げ急ぐ意識がある人に多いのですが、スローイングの反動をつけるため体をねじろうと、前回説明した2歩目、右足のステップが左足の後ろになり、肩が大きく背中側に入ってしまうことがあります(右利きの場合)。
こうなると、どうしても体をうねらすような投げ方になり、体と腕が横の動きになりがちです。スローイングでは横の動きが入ると投げる角度が安定しません。送球距離が長い分、外野手の送球は角度の勝負と言ってもよく、2度違えば、先に行ったとき、平気で5メートル程度狂い、加えて
シュート回転しやすくなります。
次にスローイングの上体の動きですが、ボール捕った後、胸の前に持ってきて、余裕があれば、ここで握りの確認をします。そこから右手は右耳の後ろの位置へ、左手はグラブ側のヒジを上げて、送球のラインをつくり、腕は上から投げおろすようなイメージで振ります。よく外野手が勢いをつけながら送球するとき、投げた後に倒れ込んで、腹ばいで先を見ているシーンがありますよね。これもタテの動きで腕を振っているからです。私自身は現役時代、肩にグラブごと担ぎ上げるようにして、そこから投げるやり方がクセになってしまいましたが、あまりいい見本とは言えませんね(笑)。
送球の精度を上げるには、顔をしっかり投げたい方向に向け、最後に踏み出す足もその方向にしっかり向けることです。そうすれば目線も左右にブレません。上体は流れの中で多少、思うようにいかなくても、足と目だけ向いていれば、送球がそれほど狂うことはないはずです。
最後、3回のまとめとしてですが、外野手は捕るだけで終わるわけではなく、捕った後にいい送球をしなければいけません。ただ、送球を強く意識し過ぎると、捕球がおろそかになったり、上体だけの無理な送球になりがちです。ステップの重要さについてもお話しましたが、下半身をうまく使い、捕球から送球までを一連の動きとして身につけてほしいと思います。
<「完」>
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年に
ロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2020年12月21&28日号(12月9日発売)より
写真=BBM