「高校生は、分からないんですよ」

天理高の146キロ右腕・達孝太は193センチ。将来性の高いプロ注目右腕である
あるベテランのNPBスカウトは言う。
「高校生は、分からないんですよ」
ひと冬を越えて、評価が一変することがある。さらにまた、春から夏にかけて急成長する可能性も秘める。
担当スカウトは、その過程を追っていくことが仕事だ。惚れて、惚れて、惚れ抜くことが「本物の視察」と言われる。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた、「活動停止→大会中止」により、この大事な機会を奪われた。プロへアピールしたい球児にとって、昨年の3年生は気の毒な1年だった。
1月29日のセンバツ選考委員会で出場32校が決まった。今後は3月19日の開幕へ向けて、準備が進められる。
昨秋からのスケールアップとして期待される一人は、天理高の193センチ右腕・達孝太だ。
天理高は近畿地区の一般選考枠(6)で、ラスト6校目に選出。選考委員会では、最も議論に時間が割かれたという。つまり当落線上の「滑り込み」で甲子園切符を得たことになるので、喜びもひとしおだろう。
最速146キロ。しなやかな投球フォームは、まさしく「伸びしろ」を感じさせる。冬場を経て、センバツではスピード表示だけではなく、球質もどれだけ精度を高めてくるか、楽しみでならない。選手ファーストで、熱血指導を展開する天理高・
中村良二監督(元近鉄ほか)の下、じっくりと育成されてきた。
現時点ではスカウトから「将来性」「素質」の部分で評価されるが、春以降の投球次第で、「目玉候補」の一人に上がる現実味を帯びる。
10都府県では、緊急事態宣言が3月7日まで延長された。予断が許さない状況が続くが、3月のセンバツに限らず、今年は無事に大会が開催されることを祈るばかりだ。
文=岡本朋祐 写真=佐藤真一