日本球界で成功する助っ人の条件とは
実戦に入り、少し苦労しているが、広島に今年入ってきた新外国人クロンには、それなりにやってくれそうな予感がある。
一昨年は3Aでホームラン王にもなったパワーヒッター。あらは多いが、ドアスイングではなく、ポイントが近く、バットが内側から出ているのがいい。ただ単にスイングが速く、真っすぐ強いというタイプじゃなさそうだ。
親子代々の野球一家らしいが、日本で絶対に成功するんだ、というハングリーさも感じるね。
ただ、今まさに直面しているように、日本の投手はコントロールがいいし、変化球の精度も高い。実戦ではしばらくは苦労するだろうが、首脳陣もそれは覚悟のうえの獲得じゃないかな。すぐは無理でも、慣れてきたら打ち始めるという計算は佐々岡監督にもあると思う。
キャンプ中継でこの選手を見ていて最初に感じたのは、「ずっと
鈴木誠也の近くにいるな」だった。半径2メートル以内というと大げさだが、いつも近くにいて、打撃練習が終わってもずっと喋っていた。
テレビのインタビューを聞いていたら「誠也はジャパンの四番としてアメリカでも有名で、素晴らしいバッターなのは知っていた。打撃の疑問があったらどんどん質問している」と言っていた。
ずっと見てきて、特に近年、バッターでは「助っ人」と言えるような外国人選手がいなくなったなと思っていた。強い球を強いスイングではじき返すという単純な野球ならすごいんだろうが、日本の投手の変化球をうまくさばけるタイプが減った。
昔も期待外れは多かったが、それでも俺の現役時代で言えば、
阪神のバース、
巨人の
クロマティ、
ヤクルトのホーナー、阪急の
ブーマーとか、常に必ず1人、2人は、「これぞ助っ人!」と感心させられるバッターがいた。
対戦していて、日本球界で活躍する助っ人の共通点として感じるのは、パワーはもちろんあるけど、引っ張りだけでなく、逆方向に打つ技術があるということだ。
さきほども触れたが、日本の投手は変化球の精度が高い。力任せのスイングでもたまたま当たれば飛ぶだろうが、アベレージは期待できない。
日本人選手で、この「パワーと技術」と言えば、まさに鈴木誠也だ。これからクロンが活躍するカギは、これからも誠也を観察し、どんどんいいところを吸収することかもしれない。
まさしく鈴木誠也の「クローン」になるくらいにね。
写真=BBM