プロ野球には達成頻度の少ないレアな記録も多い。例えば、高卒1年目のルーキーによる「初登板初勝利」だ。過去にドラフトが導入された1965年以降、19例しか達成されていない。多くの有望高卒投手がそろっていた昨シーズンも達成者は出なかった。今回は、そう簡単には達成できない「高卒新人による初登板初勝利」を記録した選手をまとめてみた。
堀内や松坂など後の大エースも達成
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中日の近藤は高卒1年目の初登板でノーヒットノーランの快挙
ドラフト制度がスタートした1965年から現在まで記録達成者は以下の19人。
※( )内は達成時の所属チーム ・
森安敏明(東映) 1966年4月13日 南海戦
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堀内恒夫(
巨人) 1966年4月14日 中日戦
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太田幸司(近鉄) 1970年4月19日
ロッテ戦
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三浦広之(阪急) 1978年6月24日 ロッテ戦
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井上祐二(南海) 1981年10月2日
西武戦
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小野和幸(西武) 1981年10月4日 ロッテ戦
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津野浩(
日本ハム)1984年5月9日 阪急戦
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近藤真一(中日) 1987年8月9日 巨人戦
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野村弘樹(横浜) 1988年10月2日
広島戦
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矢野諭(日本ハム) 1997年5月31日 ロッテ戦
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松坂大輔(西武) 1999年4月7日 日本ハム戦
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ダルビッシュ有(日本ハム) 2005年6月15日 広島戦
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山口俊(横浜) 2006年6月29日 巨人戦
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齊藤悠葵(広島) 2006年10月1日 巨人戦
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唐川侑己(ロッテ) 2008年4月26日
ソフトバンク戦
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中村勝(日本ハム) 2010年8月11日 ロッテ戦
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武田翔太(ソフトバンク) 2012年7月7日 日本ハム戦
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安樂智大(
楽天) 2015年10月5日 ソフトバンク戦
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吉田輝星(日本ハム) 2019年6月12日 広島戦
ドラフト制定以降、初めて「高卒新人による初登板初勝利」を記録したのは東映の森安敏明。シーズン最多与死球の日本記録保持者でもある。東映のエースに成長した選手だったが、残念ながら「黒い霧事件」により永久追放となった。巨人の堀内は、森安が記録した翌日に達成。以降も勝ち続け、セ・リーグ記録・新人記録の開幕13連勝を達成した。
「高卒新人による初登板初勝利」を達成した19人の中で、唯一無二の記録を作ったのが1987年の近藤真一だ。8月9日の巨人戦に先発した近藤は9回を投げて巨人打線を無安打無失点に抑え、初登板でのノーヒットノーランを記録。高卒新人が初登板で記録した例は後にも先にもこの一例のみだ。
達成した選手には、松坂大輔やダルビッシュ有といった後に大エースへと成長する選手もいるが、齊藤悠葵、安樂智大といったその後伸び悩んだ選手もいる。2019年の吉田輝星も達成以降は難しいシーズンを送っており、チームに貢献するためにはさらなる成長が必要だ。
今シーズン20人目の達成者は出るか!
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中日のドラフト1位・高橋。今季、初登板で勝利を飾ることができるか
2019年のドラフトで指名された選手は、ロッテの
佐々木朗希、
ヤクルトの
奥川恭伸、
阪神の
西純矢と期待の高卒ルーキーが複数いた。しかし、残念ながら吉田輝星に続いて「高卒新人による初登板初勝利」を達成することはできなかった。
では今シーズンはどうだろうか?
佐藤輝明(阪神)、
早川隆久(楽天)という投打の大学生が大きな注目を集めた2020年のドラフトだが、高卒もなかなかに粒ぞろい。特に中日が1位指名した
高橋宏斗は、中京大中京高時代に非凡な才能を発揮した選手。二軍キャンプでは早くも150キロ超えの投球を披露しており、多彩な変化球も魅力だ。
また、ロッテの
中森俊介、
オリックスの
山下舜平大といった、150キロ超えの速球が魅力の高卒投手も目が離せない存在だ。まだまだプロで通用するための体作りの時期ではあるが、今後の成長次第では今シーズン中の一軍昇格、プロ初登板もあり得る。
高卒ルーキーによる初登板初勝利の記録は過去19例と非常に少ない。果たして今シーズンは吉田輝星以来となる2年ぶりの記録達成となるか、今回挙げた高橋や中森、山下をはじめとする各チームの高卒新人投手に注目してもらいだい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM