
開幕戦では史上初の逆転サヨナラ満塁弾を放った西武・伊東
今から27年前、1994年の開幕戦、西武対近鉄(4月9日、西武球場)で劇的なドラマが演じられた。この試合、西武打線は近鉄先発・
野茂英雄の前に4回まで11三振を奪われるなど沈黙。1本のヒットも打てず、開幕戦でノーヒットノーランの屈辱を味わう寸前までいった。
野茂に負けじと好投を続けていた
郭泰源も9回、
石井浩郎に3ランを浴び敗色濃厚。この沈滞ムードを振り払ったのが
清原和博だった。
9回裏、先頭打者として打席に立った四番が野茂の134球目を打ち返し初安打となる二塁打。
鈴木健の四球、
石毛宏典の左飛を挟んでブリューワの二失で一死満塁とし野茂は降板。
マウンドには抑えの切り札・
赤堀元之。八番・
伊東勤に代打も考えられたが、
森祇晶監督が右翼から左翼に吹く強風に「あの風だから右バッターでいいと思った」と打撃コーチの代打策の進言を一蹴し、伊東に懸けた。
結果は――。
伊東の放った打球は開幕戦史上初の逆転サヨナラ満塁ホームランとなった。この一撃は伊東にとって通算1000安打のメモリアル打でもあった。
「自分で言うのも変だけど、これは劇的だよね」と伊東も試合後に興奮していたが、開幕戦の独特の華やかさに包まれ、さらに野球の醍醐味が詰まった試合はファンの高揚感を呼んだ。2021年の開幕戦も間もなく始まる。球史に残るようなドラマが一つでも多く生まれることを期待したい。
写真=BBM