チーム全体に植え付けた「ONEチーム」

横浜高の四番・立花祥希捕手(3年)は相洋高との準々決勝で3安打。右前打、中前打、右前打と練習の成果を発揮し、5回コールド勝利(14対4)に貢献した
神奈川の春季県大会は土、日開催。横浜高は相洋高との準々決勝を迎えるまでの1週間、打撃陣は一つのテーマに絞って練習を重ねてきた。就任2年目の村田浩明監督からの指示は「球の内側を打っていこう!」だった。
星槎国際湘南高との4回戦から四番を任されている四番・立花祥希捕手(3年)は言う。
「徹底力が、チーム力になるんです」
ボールの内側を振り抜く。つまり、球に逆らわない練習を積み重ねてきた。人が投げるフリー打撃だけでなく、カーブに設定したマシンでもおっつけてスイングする形を作った。
迎えた準々決勝(4月25日)。チーム全体にセンターから逆方向が浸透されており、14安打14得点で5回コールド勝ち(14対4)を収めた。
四番・立花は右前打、中前打、右前打と、まさしく教科書どおりの打撃だった。コンパクトなスイングで「次の打者へつなげる」という意識が目に見えて分かった。
「五番のときもありますが、四番でも自分のやることは変わりません」
村田監督はこの1週間、チーム全体に植え付けたのは「ONEチーム」だった。
「1球目、1歩目、1回、1点……。1を大事にする。チームを一つにまとめる意味もあります」
「もっと、もっと強くしたい」
この試合は初回に打者11人の猛攻で7得点と試合の入りが良く、試合を通じての全力疾走、カバーリングも「徹底」されていた。束で向かってくる横浜高のスタイルは、相手にとってみれば、ものすごいプレッシャーである。立花は言う。
「1球に入れ! といつも言われています」
すなわち、試合における1球に集中し、全員が動く。それがスキのない野球につながる。
「もっと、もっと強くしたい。もっと、もっと前へ進みたい。もっと、もっと時間が欲しいんですけど、時間がない中で選手たちはやってくれました。元気よく、キビキビ、泥臭くが基本。コロナの状況で野球をやらせていただけるありがたみ。大会を運営していただいている高野連の先生にも感謝の言葉しかありません。『新生・横浜』。変わったんだ! というところを見ていただきたい。『やってやろう!』というところを、姿で見せたいです」(村田監督)
4回戦からは有観客試合。横浜高は県内トップの集客力を誇る人気校である。この日は前売りチケットを握り締めた上限2000人であったが、横浜高が目指そうとしている野球が伝わったに違いない。感染予防対策から声援は送れないが、拍手で十分に届いてきた。
文=岡本朋祐 写真=大賀章好