胴上げ投手に一番乗り

現在は監督として楽天を率いる石井
2021年、古巣の楽天でプロ野球に復帰した
田中将大のプロ野球における連勝記録が28でストップした。田中は13年に無傷の24連勝でチームを初のリーグ優勝、日本一へと導き、前年のものと合わせて連続シーズン28連勝として、そのオフにヤンキースへ移籍、7年間プレーしたのだが、見落としてはならないのは、あるいは言うまでもないことかもしれないのだが、この7年の間、田中のプロ野球での連勝記録は“継続中”だったのだ。もし田中が20年オフにメジャーで引退していたとしても、やはり“継続中”。たとえ10年後であれ20年後であれ、プロ野球で現役に復帰して敗れる前に勝利投手となれば、記録は29連勝となっていたはずだ。
さて、その楽天で就任1年目を迎えたのが
石井一久監督。現役時代は1990年代の
ヤクルトで三振の山を築いた左腕で、やはりメジャーへ移籍して古巣のヤクルトで復帰して、最後は
西武で引退した。実戦経験もさることながら、豊富なのは優勝経験。そんな石井が保持している隠れた“プロ野球記録”は、「優勝決定の際に胴上げ投手に誰よりも早く到達した」回数だ(?)。

08年の西武日本一では真っ先にマウンド上のグラマンに抱き着いた
一般的に胴上げ投手は真っ先にバッテリーを組んでいた捕手と抱き合うものだが、捕手よりも先に秘めた俊足を生かしてベンチからマウンドへと到達し続けた石井。もちろん公式記録でもなんでもなく、審判が判定するようなものでもないが、在宅ワークで手に入る確実な資料だけでいえば、2001年のヤクルト、08年の西武で、それぞれの日本一の瞬間に、いずれも石井がマウンド一番乗りを果たしている。どうでもいいことにも思えるが、あなどってはならない。達成の難易度は、それなりに高い。まずはチームが優勝することが大前提。これが簡単なことではない。そこで捕手よりも長い距離を駆け抜けねばならないのだ。
さて、石井監督。現役時代に少なくとも2連続であり、ユニフォームを着てベンチにさえいれば“出場機会”になりそうだから、現在も“継続中”だ。21年は開幕から好調の楽天だが、“記録の継続”には、ベンチからマウンドへの距離よりも圧倒的に長い道のりが横たわっている(?)。
文=犬企画マンホール 写真=BBM