つなぎやバントのイメージが強かった「二番打者像」が、近年大きく変わりつつある。二番に強打者を置く布陣もスタンダードになり、打線の組み方にも影響を与えている。2021年シーズンも開幕から1カ月以上が過ぎたが、果たして、セ・リーグ6球団の二番打者の現状は? 記録は5月7日現在 読売ジャイアンツ
新助っ人の合流遅れもあり、
若林晃弘で開幕を迎えたが、得点力が上がらないとみるや、
原辰徳監督は早々に打線改造に着手する。二番打者の責任というよりも、打線全体の問題で、オーダーはここまで35試合で27通り。二番には好調のZ.
ウィーラー(5試合)を据えたこともあったが、坂本勇人(23試合)で落ち着いた。もともと一番に
DeNAから移籍の
梶谷隆幸を据え、二番・坂本でチャンス拡大もしくは得点し、クリーンアップにつなげていく形は指揮官の理想とするところ。坂本も二番に入って打率.315、7本塁打、12打点と期待に応えている。
阪神タイガース
開幕から二番打者として全試合に出場しているのが糸原健斗だ。2年連続盗塁王で、2年連続チーム最多安打である一番打者・
近本光司の得点をヘルプすることが今季の役目だろうと考えられていたが、近本が開幕からスランプに。その穴を埋めるかのごとく糸原は開幕から打ちまくった。打率.331は現在、リーグ2位だ。糸原の活躍で打線も活性化し、チーム打率、得点とリーグ1位をキープ。首位を快走するチームの立役者と言っても過言ではないだろう。
東京ヤクルトスワローズ
開幕こそ二番には
青木宣親が入ったが、今は捕手の中村悠平がはまっている。これは最初、青木らが新型コロナによる影響で登録を抹消された際の“緊急措置”として始まった。だが、中村が打撃好調だったこともあり、青木らが復帰後も二番起用が続いている。バントもヒッティングも可能な中村が二番に入ることで、下位に
オスナら長打力が武器の助っ人を置くことができ、抜け目のない打線となった。ただ、リードオフマンとしてチームを牽引してきた
山崎晃大朗らの調子が徐々に落ちてきており、大きな組み換えの可能性もあるだろう。
広島東洋カープ
開幕から10試合目までは、例年通り
菊池涼介が座っていたが、
田中広輔の不調によって菊池涼が一番になり、以降、二番打者はさまざまな選手が務める形になっている。その中で、適性を見せて最も多く使われているのが、羽月隆太郎だ。ここまでに10試合に二番で先発起用され、打率.306。走者を置いた際にはバントのサインが多いが、すでに4犠打を記録、自らが出塁した際にも3盗塁と、足と小技を生かして奮闘している。欲を言えば、四球を増やして出塁率(二番先発時は現在.324)をもう少し上げていきたいところか。また、7試合に二番で先発している
安部友裕も、二番での先発時は打率.360、出塁率.407と好成績を残している。
中日ドラゴンズ
大きな課題でもある得点力アップを図るため、
与田剛監督は開幕から二番に
阿部寿樹を起用した。昨年の13本塁打&61打点は主砲
ビシエドに次ぐ数字。しかし、その阿部がまさかの打撃不振。そこからチームトップのスピードを持つ
高松渡、守備力の高い
三ツ俣大樹も置いたものの、ほぼ京田陽太が務めている。ただ、その京田も打撃に課題を残し、小技のきく二番タイプとは言い難い。それでも現時点では、昨シーズン終盤のように足も使える
大島洋平-京田の一、二番コンビがベストだろう。京田が“つなぎ役”としての役目を果たすことができれば、もう少し得点力不足は解消されるはずだ。
横浜DeNAベイスターズ
シーズン開幕からしばらくは
関根大気が二番を打ち、その後は
柴田竜拓が座っていた。しかし、関根は登録抹消。柴田は4月末にケガで戦線を離脱したため、現在は固定できていない。
宮崎敏郎や
牧秀悟といったスラッガータイプを置いた時期もあったが、基本的にはDeNAの二番は「つなぎ」の役割を担うことが多い。一番・
桑原将志が出塁し、二番に入る大和や
倉本寿彦でチャンス拡大、クリーンアップで得点をかせぐのが攻撃パターンだ。
写真=BBM