読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.打球を追うとき、ボールをどう見ながら追いかけていけばいいのでしょうか。うちの子どもはほぼ定位置のフライでも後ろに転んでしまうことが多く、守備を嫌がっています。(愛知県・40歳)

西武時代の平野氏の外野守備
A.早くからグラブを構えないことが重要です。前後左右に動けるような準備をしながらリラックス 長い距離を移動して追い掛けなければならないフライへの対応はもちろん簡単ではありませんが、慣れていないと、守っていた場所からほんの少しの移動で捕球できるときも難しいと思います。
質問は、小学校の低学年くらいのお子さんのことだと思います。実際、子どもたちあるいは、あまり野球経験のない人が草野球などで外野を守っているときなどは、経験者にはイージーに感じられるフライでも、バンザイをして後ろに逸らしてしまったり、足を絡ませ、尻餅をついてしまうシーンを見ることがあります。原因としては、まず、打球傾向(伸び)が感覚として分かっていないため、落下地点が予測できず、特に頭を越えていくような当たりが来ると、パニック状態になってしまうことがあるでしょう。慣れておらず自信がないときは、より失敗したときのイメージにとらわれがちです。
そして、もう1つは、早くからグラブを構え過ぎることもあります。高々と上がっているときから両手を上に突き出して体を打球に対し正対させて準備してしまうと、体に余計な力が入り、足がそろって止まってしまいます。
ちょうどそこに球が落下してくればまだいいのですが、ほぼそんなことはあり得ず、例えば、少しでも後ろにいくと、グラブを構えたまま真後ろに動くしかなくなります。俗に言う「機関車バック」とか「自動車バック」でヨロヨロと下がっていき、見上げたボールの軌道にそって体を反って、足がそろったままバランスを崩して転倒してしまうこともあります。
私が子どもたちに指導するときは、ほぼ定位置のフライでも、早くグラブを構え過ぎないように言っています。上半身は少し半身にし、前後左右に動けるような準備をしながらリラックスさせ、足については軽く踏むような動きでもいいので、動かし続けていることが大切です。実際に経験者の皆さんも、早くからグラブを構え、両足がそろった状態からボールを追いかけてみると、子どもたちがどんな状態かが分かりアドバイスもしやすくなるかもしれないですね。
最後、グラブを出して捕球するときも力を入れ過ぎず、ヒザをクッションのように少し曲げてみてください。姿勢としては、おなかを少し引っ込め、ふところに空間をつくるイメージです。上体が伸びて突っ張った状態になると、腕に力が入り、少しのずれでも対応できず落球してしまいます。
<「中編」に続く>
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年に
ロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2021年4月19日号(4月7日発売)より
写真=BBM