プレースタイルの変化

5月12日のロッテ戦の3回、四番で同点2ランを放った柳田
5年連続日本一を目指す
ソフトバンクが波に乗り切れない。エース・
千賀滉大が左足首の靱帯損傷、主砲の
グラシアルが右手薬指の剥離骨折と、右手中指と薬指の靱帯損傷の重傷で戦線離脱した影響も大きい。投打の主力が長期離脱するのは大きな痛手だが、現有戦力で戦うしかない。その中で替えの利かない選手が
柳田悠岐だ。
今季は二番、三番、四番で起用されている。開幕から三番を打っていたがなかなか調子が上がらず4月14日の
オリックス戦(PayPayドーム)から二番に。この打順で打率.238から.294と大きく上げると、グラシアルの離脱で四番に。今月12日のロッテ戦(PayPayドーム)では3回に右翼席上段に飛び込む7号2ランを放つなど猛打賞、3打点の活躍。引き分けに終わったが、四番としてきっちり仕事を果たした。
昨季は119試合出場で打率.342、29本塁打、86打点。146安打を放って最多安打のタイトルと自身2度目のMVPに輝いた。柳田の能力を考えれば驚きのない数字かもしれないが、本人は不安だっただろう。2019年は4月に「左半膜様筋腱損傷(肉離れ)」で約4か月間の長期離脱。野球ができるか不安な時期もあっただけに、実戦復帰した際には涙を流した。翌20年に完全復活したのは努力の証だ。
柳田は攻守走3拍子そろった選手で、15年には打率.363、34本塁打、99打点、32盗塁でトリプルスリーを達成している。13年から18年までの6年間で計133盗塁を積み上げたが、大ケガで長期離脱した19年は4盗塁、昨年も7盗塁と減っている。これは脚力が落ちたのではなく、故障のリスクを考慮してプレースタイルが変化しているのだろう。
三番のイメージが強いが、ポイントゲッターとしての役割が強くなる四番も似合う。規格外の本塁打でファンを魅了しているが、意外なことに18年の36本塁打が自己最多で、40本塁打を打ったシーズンが一度もない。昨年も29本塁打という数字には満足がいなかったようで、「いい年だったけど、本塁打が止まった時期もあった。もっともっと本塁打を打ち、ファンの皆さんに喜んでもらえるように」と12月のファンフェスティバルで誓っていた。伸びしろを考えると、本塁打数はもっと増える可能性が十分にあるだろう。
32歳以降も本塁打量産の門田

40歳の88年に44本塁打を放った門田
ソフトバンクには
小久保裕紀ヘッドコーチという現役時代に四番で長年活躍した良きお手本がいる。シーズン40本塁打を2度マークするなど和製長距離砲として通算413本塁打。メジャーの影響で「二番最強打者説」も唱えられるなど当時と時代が違うかもしれないが、「四番・柳田」で新たな歴史を刻むのも興味深い。
柳田は現在32歳。現役通算567本塁打を放った
門田博光氏のキャリアは一つの道標にならないだろうか。20代の時は中距離打者だったが、32歳を迎えた80年以降にシーズン40本塁打を4度マークするなど、386本塁打を積み上げた。柳田もホームランアーチストとして進化するか。今年は野球人生の分岐点になるかもしれない。
写真=BBM