昨季も救援登板で好投

現在は二軍で調整している藤浪
阪神が開幕から順調に首位を快走している。その原動力になっているのが強力な先発投手陣だ。
エース・
西勇輝、
青柳晃洋、
秋山拓巳の3本柱に加え、ドラフト2位左腕・
伊藤将司も3勝1敗、防御率2.57と安定感抜群だ。開幕から無傷の5連勝を飾った
ガンケルが右肩の張りで5月10日に登録抹消されたが、新外国人の
アルカンタラが一軍に合流。来日初登板となった16日の
巨人戦(東京ドーム)で白星スタートを切った。プロ2年目のドラフト1位右腕・
西純矢も19日の
ヤクルト戦(甲子園)で5回無安打無失点の快投を見せ、プロ初先発初勝利を飾った。制球に苦しんだ部分はあったが大きな自信になったに違いない。ファームにも
チェン・ウェイン、
岩田稔、
中田賢一と実績ある投手たちが控える。先発陣の質・量ともに12球団トップレベルと言えるだろう。
この投手陣に勢いをつけたのが開幕投手を務めた
藤浪晋太郎だった。昨季わずか1勝に終わったが、今年はオープン戦で快投を続けてプロ9年目で自身初の大役に指名された。3月26日のヤクルト戦(神宮)で白星こそつかなかったが、5回2失点の粘投で開幕戦勝利に貢献。その後も先発ローテーションで回った。5試合登板で2勝1敗、防御率2.60は合格点を与えられるが、登板を重ねると課題の制球難が顔をのぞかせる。4月23日の
DeNA戦(甲子園)は4回0/3を4失点KOで今季初黒星。7四死球、2暴投と大荒れの内容で翌24日に登録抹消された。
藤浪はファームで先発調整を続けているが、阪神ファンからはセットアッパーでの起用を望む声が少なくない。昨年に救援に配置転換されたことで輝きを取り戻したことが大きく影響しているだろう。先発では1勝5敗、防御率4.43と不安定だったが、9月下旬に救援に回ると、13試合登板で7ホールド、防御率2.35とセットアッパーとして申し分ない働きを見せた。スタミナ配分が必要ない救援で藤浪は160キロ近い直球を投げ込み、打者をねじ伏せていた。救援のときは制球難に苦しむケースが少なく、カットボール、スプリットの精度も良かったため三振奪取能力が高かった。
「いつどんな形で一軍に戻ってくるか」
藤浪の中継ぎ起用を望む声は、救援陣に不安があるチーム事情も関係している。左腕の
岩崎優、
岩貞祐太がセットアッパーを務め、守護神・
スアレスが試合を締める勝利の方程式が確立されているが、登板過多が懸念される。右のセットアッパーは
小林慶祐、
馬場皐輔がいるが、ここにパワーピッチャーの藤浪が加われば起用法のバリエーションが増える。ロングリリーフもできることから先発が早いイニングで降板した場合に「第2先発」として起用できる。
藤浪が先発要員で一軍に戻ってくるか、救援に配置転換されるかは分からない。だが、阪神のリーグ優勝に向けて必要なピースであることは間違いない。球団OBの
岡田彰布氏は週刊ベースボールのコラムで、「同期の大谷(
大谷翔平)がメジャーで活躍している。それをどんな思いで藤浪は見ているのだろうか。そんなことを考える余裕はない。いつどんな形で一軍に戻ってくるのか。なるべくいい時期に上がってくることが必要である。なにせ今シーズンの開幕投手なんだ。それを胸に刻んで、戻ってきてほしいものだ」と期待を込めている。
光は見えている。完全復活した姿をマウンドで見たい。
写真=BBM