ドーム初日は大雪でも試合を開催したが
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ドーム元年の88年、東京ドームでの巨人・王監督
例年より早く雨の季節が到来した2021年。古くから雨はプロ野球の“強敵”で、雨が激しければ試合は中止され、これが重なれば終盤のスケジュールは過密に。そこに優勝の行方が絡んできたりすると選手のフィジカルに大きな負荷がかかり、1988年、最終戦ダブルヘッダー、“10.19”で惜しくも優勝を逃した近鉄ナインが疲労困憊していたのも、そこに遠因がある。
奇しくも同年、東京ドームが開場。球場に屋根がつけば雨の呪縛から解放されるというわけだ。実際、4月8日に東京ドームを本拠地とする巨人と
ヤクルトの開幕戦が行われたが、この日は季節はずれの大雪で、巨人の
王貞治監督は「これで野球ができるんだから不思議な気分だね」とコメントしている。90年代に入ってからは福岡、大阪など各地でドーム球場が竣工。ドーム球場に限ったことではあるものの、試合が雨の影響を受けることは激減した。
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88年の開幕戦、東京ドームのこけら落としの日は雪だった
ただ、敵もさるもので、影響が皆無になったわけではない。ドーム“元年”から3年目の90年には台風の影響で
中日が東京へ移動できず巨人戦が中止に。自然はドーム球場に到着する前の中日ナインに襲いかかったわけだ。97年には開場したばかりのナゴヤドームで雨漏り。そのナゴヤドームでは、2000年に屋根は雨を防いだものの浸水のため中日と
広島の試合が中止に。このときは交通機関も乱れ、甲子園へ向かっていた巨人ナインが新幹線での車内泊を余儀なくされて、
阪神戦も中止となっている。
この21年5月にもPayPayドームのルーフオープンデーで試合の準備中に雨が降るアクシデントがあった。屋根が開いていたのだから濡れてしまうのは仕方のないことだが、人間が万事を尽くしても、そのスキを突いてくるのが自然というものなのだろう。雨に翻弄されることも含めて、プロ野球も人間の営みなのだ。ただ、プロ野球が記録的なシーズンとなることは歓迎したいが、記録的な雨となると話は別。1997年のナゴヤドーム雨漏りのときは1時間に15ミリの降雨によるものだったという。プロ野球に限らず、災いなきことを祈るばかりだ。
文=犬企画マンホール 写真=BBM