今季、勝負強いバッティングが光っているのは
呉念庭(
西武)だ。6月14日の
広島戦(マツダ広島)、4回無死一、二塁で先制の右前適時打を放ったが、これで得点圏では42打数22安打、得点圏打率.524と驚異的な数字になった。6月22日現在では51打数23安打で得点圏打率は.451に落ちたが、それでも12球団No.1の高い率を誇っている。
昨季の得点圏打率王はセ・リーグが
村上宗隆(
ヤクルト)の.3518、パ・リーグが
柳田悠岐(
ソフトバンク)の.369。4割超の得点圏打率を1年間、キープするのもたやすいことではないが、5割近くの数字をたたき出した選手もいる。それは1985年の落合博満(ロッテ)だ。
この年の落合はシーズン前から「今年はタイトルを獲る。それも全部いただく」と三冠王を公言していたが、有言実行。打率は2位のデービス(近鉄)に2分4厘差の.367、本塁打がデービス、
秋山幸二(西武)に12本差の52本、打点も
ブーマー(阪急)に24点差の146打点と、いずれも2位以下に大差をつけて2度目の三冠王を獲得した。
実は82年に1度目の三冠王になった際、打率.325、32本塁打、99打点の数字を「物足りない」と酷評する声が多く、悔しい思いをしていた。85年は「数字で納得させ、文句は言わせない」という落合の意地もあってのハイレベルな数字での三冠王獲得だった。
圧倒的な結果は得点圏でも表れた。歴代No.1の得点圏打率.492をマークしたのだ。走者別打撃成績の内訳は以下になる。
【85年落合博満の走者別打撃成績】
走者なし .318(233打数74安打、24本塁打、24打点)
走者あり .419(227打数95安打、28本塁打、122打点)
一 塁 .333(105打数35安打、12本塁打、24打点)
得 点 圏 .492(122打数60安打、16本塁打、98打点)
二 塁 .400(30打数12安打、4本塁打、14打点)
一 二 塁 .441(34打数15安打、6本塁打、24打点)
三 塁 .600(15打数9安打、2本塁打、13打点)
一 三 塁 .655(29打数19安打、4本塁打、32打点)
二 三 塁 .600(5打数3安打、0本塁打、7打点)
満 塁 .222(9打数2安打、0本塁打、8打点)
85年は出塁率も.4806。ほぼ2打席に1打席の割合で塁に出ているが、出塁率に関しては2年連続三冠王に輝いた翌年はこれを上回る.487だ。とにかく、このころの落合は手が付けられない最強打者だった。
写真=BBM