
5年目でプロ初勝利を挙げた楽天・西口
楽天の
西口直人がプロ5年目で初勝利を挙げた。6月26日の
ソフトバンク戦(楽天生命パーク)、この日の先発はドラフト2位ルーキーの
高田孝一だったが、初回に頭部死球を与え危険球退場。二死一、三塁の状況でマウンドに上がったのが西口だった。3月10日の
ロッテとのオープン戦(静岡)で打球を受けた
則本昂大に代わり緊急登板したことを振り返り「あのときの反省を生かせたと思う」と、この日は4回1/3を1失点。チームを勝利に導いた。
甲賀健康医療専門学校から2017年ドラフト10位でプロ入りし、5年目で日の目を浴びた苦労人。だがこれを「想定内」と話したのが
愛敬尚史担当スカウトだ。
「公立高校(山本高)から専門学校へと進んでいる彼は圧倒的に経験値が少ない。高校でやるべきことをプロでやってきたんです」
ストレートの球質としなやかな腕の使い方、クセのないフォームに伸びしろを感じたという愛敬スカウト。体力をつけ、下半身を使って投げられるようになれば、その真っすぐはさらに伸びる。そしてプロで戦うために必要な変化球を磨き、二軍で多くの試合に出て経験を積むことが必要だった。だからこそ、時間はかかることを前提に指名したというのだ。
「野球脳は中学生くらいだったと思います(笑)。強豪校の選手たちは3年間であらゆる経験を積む。高校でやることを、この5年で補ったという感じかな」
それでも指名に踏み切ったのは「欲があるからいい。プロに行きたい、絶対にやってやるんだという気持ちが人一倍あった」から。ケガも経験し、一軍登板は今季を除くと18年の1試合のみ。この5年間は決して順調な成長曲線を描いてきたわけではなかった。それでも「その強い思いがコツコツ努力を続けられた理由なのでは」と愛敬スカウトは語る。

将来的には先発として一本立ちが期待されている
26日の初めてのお立ち台では、ともにヒーローとなった
茂木栄五郎が「なかなか登板する機会が少ない中で、それでも気持ちを切らさずにずっといいピッチングをしてくれていた。今日も西口ならこれくらいやって当然かなというふうに思っていました」と辛口なコメントでその努力を認める。今季の登板はこの日を含め11試合。そのほとんどが厳しい状況での登板だった。
「ここまでよく来たな、よく頑張ったなと思う。だけど、ようやくスタートラインに立っただけ。ここからプロの厳しさを学び、乗り越えていかなければいけない。まだまだですよ」と愛敬スカウト。西口も「任された場面でしっかり結果を残せるように。これからもしっかり練習してもっといいピッチャーになりたいと思います」と気を引き締めた。今年25歳を迎えるプロ5年目。ここからが本当のスタートだ。
文=阿部ちはる 写真=BBM