「高校球児一同」と使った理由

神奈川大会の選手宣誓は厚木高の主将・杉山史浩が務めた
7月10日、2年ぶりの甲子園出場をかけた神奈川大会が開幕した。新型コロナウイルスの感染防止対策により、開会式は行われなかった。メーン会場である保土ヶ谷の第1試合(神奈川商工高-横浜立野高)を前に、選手宣誓(厚木高・杉山史浩主将)のみが実施された。
177秒。思いが伝わるメッセージであった。
「宣誓。高校球児の夢の舞台・甲子園への出場権をかけた2年ぶりの夏が、いよいよ始まります。激戦区・神奈川でこれまでの努力の成果を発揮できることに、胸が高まっています。ともに野球をする仲間、本気で立ち向かうライバル、支えてくださるすべての方々への感謝の思いが、私たちの原動力です。そして、皆さまの希望の光となることが、私たちの使命です。球場に来られなくても、声は出せなくても、応援する気持ちは届いています。明るい未来へ向かう日本中の心の架け橋となれるよう、感謝を胸に、これより始まる一戦一戦、一投一打に魂を込め、感動と希望を皆さまに与えられるような試合をすることを、今大会参加する高校球児一同で誓います」
「足が震えていた。記憶がなくて……」とは思えない、堂々とした宣誓であった。
「コロナによって、さまざまな制限はありますが、高校野球は熱いんだぞ!! ということを伝えたかった。思いを届けられたので、悔いはありません」。杉山は達成感を語った。
6月5日の組み合わせ抽選会で、希望した103チームの中から厚木高が選ばれた。昼休みに3年生でミーティングを開き、内容を検討。猛練習を重ねて、この日を迎えた。
最後に「高校球児一同」と使ったことについては「つらかったのは、自分だけではなかったはず」と説明。コロナ禍で活動自粛が続き、思うように練習が積めない中でも、「心のモチベーションを折らないようにした」と明かす。
「緊急事態宣言中の1、2月の期間をどう使うか。ここで差が出ると思い、バットを振って、トレーニングをしてきました」。解除後もまん延防止等重点措置が実施され、従来の週6日ではなく、週3日と満足に活動ができない時期もあったが「成長するんだ!」と、より集中力を持って取り組んできた。
厚木高は県内屈指の進学校。夏が終われば、大学入試モードに入るという。今大会の目標は「ベスト16以上(5回戦進出)」。大学で野球を続けるかは未定。とにかく「高校野球を後悔しないように、最後まで全力でやりたい」と目を輝かせる。厚木高の初戦(2回戦、対鶴嶺高、小田原)は7月14日に予定される。
背番号3を着ける一番打者の杉山が斬り込み隊長となって、チームを活気づけていく。
文=岡本朋祐 写真=菅原淳