2006年に日本人メジャー・リーガー初の捕手が誕生した。城島健司である。ソフトバンクをFAになり、マリナーズと3年総額1650万ドルの契約を結んだ。入団に際して「期待を考えると、しっかりしなければならない気持ち」と抱負を語っていた。マリナーズは前年から正捕手がいない状態であり、城島獲得にはその意向があった。 打者としては及第点も……

マリナーズ時代の城島健司
デビューは4月3日、開幕のエンゼルス戦。七番・捕手で先発出場した。相手先発のバートロ・コロン。3回の初打席は遊ゴロに倒れたが、5回の第2打席では右越え本塁打を放った。結果は3打数1安打。だが試合は4対5で競り負けた。
翌4日もエンゼルスの先発ジョン・ラッキーから2回に左越えの一発。デビューから2試合連続本塁打を記録した。打撃は好調。とりわけ6月は打率.345、5本塁打、16打点の好成績を収めた。
1年目は144試合出場で打率.291、18本塁打、76打点と、堂々たる成績だった。打率は
イチローの.322に次ぐチーム2位。本塁打数は日本人選手の1年目としては2003年の
松井秀喜の16本を上回り、この時点では最多だった。新人王の投票では17勝を挙げて受賞したタイガースのジャスティン・バーランダー、35セーブを挙げたレッドソックスのジョナサン・パペルボン、12勝の左腕フランシスコ・リリアーノに続いて4位だった。
打者としては及第点だったものの、捕手としては苦しんだ。捕手が投手をぐいぐいリードしていく日本式に、投手たちは戸惑った。その結果は先発投手陣の数字に表れている。この年43歳だったベテラン左腕のジェイミー・モイヤーは城島と組んだ22試合で防御率4.62だったがリベラとは4試合で防御率3.16だった。ジャレッド・ワシュバーンは城島のときが29試合で4.93、リベラとの2試合は1.32。ギル・メッシュは城島と28試合で4.91、リベラとの4試合は2.17だった。試合数など条件が違うので言い切るのは難しいが、この先発3投手とも傾向がはっきりしているように見える。
3年契約を終え、2009年から契約を3年延長したが、2009年のシーズンを終えたところで契約を2年残して破棄し、日本球界に復帰した。近年、日本人野手がメジャーで苦しんでいるのを見ると、城島の打撃はレベルが高かった。しかし捕手にとって文化の違いは大きかったと言わざるをえない結果になった。
『週刊ベースボール』2021年7月12日号(6月30日発売)より
文=樋口浩一 写真=Getty Images