開幕が3月25日から4月12日に延期

2011年、楽天の本拠地開幕戦でスピーチする嶋
今から10年前、2011年のプロ野球もイレギュラーなシーズンだった。この21年のように、あらかじめ東京オリンピックが想定された計画的なイレギュラーではない。なぜイレギュラーになったかについては書かない。当時がリアルタイムではなかった若い人は、さまざまなツールを使って、がんばって調べてほしい。
当初ペナントレースの開幕が予定されていたのは3月25日だったが、まずパ・リーグが4月12日に延期を発表した。一方で、予定どおりの開幕を発表したセ・リーグにはプロ野球の選手会が反発。なかなか選手会と両リーグの意見がまとまらず、紆余曲折を経て、最終的には4月12日の両リーグ同時開幕に落ち着いた。
ひときわ注目が集まったのは、このとき楽天の司令塔で、チームの選手会長も務めていた
嶋基宏(現
ヤクルト)の発言だった。4月2日に札幌ドームで行われた
日本ハムでのチャリティーマッチを前に、あいさつに立った嶋は「見せましょう、野球の底力を」と力強くスピーチ。実際、楽天が“底力”を整えて悲願を果たすのは2年後の13年になるのだが、この嶋の言葉は人々の心を大きく揺さぶった。
12日のペナントレース開幕戦。楽天は千葉のQVCマリンスタジアムで
ロッテと戦い、同点で迎えた7回表に嶋の決勝3ランが飛び出して、9回裏にはロッテの猛追をかわして快勝する。嶋のアーチに「“底力”を見た」と語った
星野仙一監督がウイニングボールを手にして涙を見せる場面もみられた。ただ、その後も楽天は関西など敵地を転戦。Kスタ宮城で本拠地開幕戦を迎えたのは29日だった。
ふたたび嶋は喝采を浴びる。流暢ではなかったかもしれないが、嶋は言葉をかみしめるように、2万人を超える観客に「見せましょう、東北の底力を」と語りかけた。試合でも嶋は3打数2安打の活躍を見せ、投げては「終わるのがもったいないくらい最後はジーンときた」という
田中将大が138球、1失点の完投で、楽天が
オリックスに完勝している。
どうにか開幕を迎えたプロ野球だったが、その後もイレギュラーは続いた。これについては、あらためて次回に。
文=犬企画マンホール 写真=BBM