
東京五輪で力投する栗林
8月2日、準々決勝アメリカ戦(横浜)、10回表に見事な“火消し”を見せたのが
栗林良吏(
広島)だった。日本は9回裏同点に追いつき、6対6で延長に突入。延長はタイブレークで無死一、二塁から始まったが、この回からマウンドに上がった栗林はアメリカ打線を翻弄した。T.フレージャーをフォークで空振り三振に仕留めるとE.フィリアもフォークで二ゴロ。最後はM.コロズバリを全球直球で左飛に打ち取り、アメリカ打線をゼロに封じ、その裏のサヨナラ勝利を呼び込んだ。
国際試合独特の緊張感からか、グループステージ初戦のドミニカ共和国戦(あづま)では1回を2安打1四球で1点を失った。しかし、続くメキシコ戦(横浜)では1回を1奪三振無失点。本来の投球を取り戻し、マウンドで堂々たるピッチングを繰り広げている。
今季、トヨタ自動車からドラフト1位で広島に入団した栗林。新人ながら守護神に抜てきされて開幕から22試合連続無失点の球団記録を樹立し、前半戦終了時点で18セーブ、防御率0.53と素晴らしい成績を残した。持ち球は直球、フォーク、カットボール、カーブ。178cmとそれほど身長が高いわけではないが、真上から投げ下ろすタイプ。リリースポイントが高いのが特徴で直球もよりスピンが効く。さらに、このフォームから投じられるフォークが最大の武器だ。
球団OBである
新井貴浩氏は、そのフォークを次のように解説する。
「高いところからバシッと投げ下ろすので、落差があってすごく嫌なのはもちろんなのですが、たとえ抜けてしまった場合でも、そう簡単に打たれない。これが彼のフォークの特長です。普通、フォークを含めて変化球の浮いたボールは、甘いボールになって長打になりやすいものです。でも彼の場合は、フォークが仮に落ちなかったとしても、そのボールがチェンジアップみたいになる。奥行きが使えるんですよね。打者からするとボールが来ないので、それこそど真ん中に来ても空振りしたりします。打てたとしてもファウルになるケースも多い。こういうピッチャーはすごく珍しいです」
日本は8月4日、準決勝で韓国と戦う。この一戦はもちろん、金メダルを獲得するためには最後を締める栗林の役割が重要だ。質の高い直球、フォークを駆使して、背番号20が日本を頂点に導く。
写真=Getty Images