心がこもったエールを発信

夏の甲子園は8月10日に開幕。開会式の冒頭では俳優・歌手の山崎育三郎さんが大会歌『栄冠は君に輝く』を独唱した
午前9時、静寂に包まれた甲子園。前日9日の順延(台風接近による影響)を経て8月10日、待ちに待った2年ぶりの夏がやってきた。
一塁ベンチの横の通路からは俳優・歌手の山崎育三郎さんが白シャツと黒パンツで颯爽と登場。一塁のラインを通過し、マウンド右横を通過して1分後、ステージのある二塁ベース後方へと歩いて向かった。
開会式の冒頭で、大会歌『栄冠は君に輝く』を独唱した。1948年に古関裕而氏が作曲。山崎さんは昨年、古関氏をモデルにした朝ドラに出演し、同曲を熱唱して大きな反響を呼んだ。かつては野球少年であったこともあり、甲子園球場には特別な思い入れがある。今回の質素なスタイルからも、高校野球へのリスペクトを強く感じた。
235秒。地区大会を勝ち上がった49代表校の選手たちを目の前にして、美しい歌声がグラウンドを支配した。心がこもったエールを発信。思わず、涙が出てきそうになった。
1番のイントロは、ゆっくりとスタート。2番ではややテンポを上げ、3番ではワンオクターブほど上げていた。締めの「ああ 栄冠は」から「君に輝く」までは一呼吸置き、気持ちを最大限に込めて歌い終えた。ドラマでの熱唱を再現するような感動シーンだった。
深々と一礼。大会役員にも頭を下げ、一塁ベンチ横の通路に下がっていった。抜群のオーラ。歌が持つ、不思議な力を披露してくれた。
真夏の定番曲として長く親しまれてきた『栄冠は君に輝く』。甲子園からの応援メッセージは高校球児だけでなく、日本全国へ、勇気と元気が届いたに違いない。
文=岡本朋祐 写真=牛島寿人