「次につながってよかった」

横浜の1年生・緒方漣は広島新庄との1回戦で逆転サヨナラ3ランを放った
■8月11日 1回戦
横浜3x-2広島新庄
開幕前々日(8月8日)のオンライン会見。横浜で
愛甲猛氏(元
ロッテほか)以来と言われる、1年夏で背番号1を着けた左腕・杉山遥希(神奈川大会は背番号15)は、今大会へ向けて、こう意気込みを語っていた。
「最後の夏だと思ってやっています」
1年生ながら、負ければ終わり。この熱き思いは、同級生に共有されていた。甲子園では杉山以外に遊撃手の緒方漣(背番号6)と
小野勝利(同18)がベンチ入り。
広島新庄との1回戦(8月11日)は、0対2で最終回を迎えた。土壇場の二死一、三塁から逆転サヨナラ3ランを放ったのが「一番・遊撃」で出場した緒方だった。
なぜ、この土俵際で打てたのか。緒方は言う。
「3年生と1日でも長くやりたい。次につながって良かったです」
緒方は今春の県大会から背番号6を着けた。村田浩明監督は言う。「学年は関係ない。全員がライバル」と、完全実力主義を打ち出している。もともとは鉄壁の守備力が買われての起用。春の段階で、打撃面はやや力負けしている印象があったが、夏に向けて急成長した。166センチ63キロながら、コンパクトなスイングでパンチ力もつけてきた。
今夏の県大会は一番打者として、打率.455、7打点と打線をけん引。10四死球と選球眼の良さも際立っていた。甲子園では持ち味の軽快なフィールディングを披露。高い才能を発揮した。
「夢のような打席でした」
気持ちだけではない。劇的サヨナラ弾の裏付けとして、確固たる技術もあった。
「監督からボールの内側をたたけ、と、打席で体現しようと思いました。人生で一番、良い当たりでした」
歓喜のホームインは、3年生が出迎えてくれた。整列後、勝利の校歌を聞き終わると一礼。そして主将・安達
大和ら3年生は広島新庄の一塁ベンチへあらためて、深々と頭を下げた。相手へのリスペクト。常日ごろから言われている「感謝」の姿勢を示したのである。1年生・緒方ら下級生はこうした先輩の背中を見て、次世代につなげる伝統としていく。
2回戦は智弁学園(奈良)と対戦。緒方が尊敬する3年生との夏はまだ、終わらない。
文=岡本朋祐 写真=牛島寿人