8月13日の
中日戦で巨人のチアゴ・ビエイラが球速166キロをマーク。昨季の日本シリーズでも164キロを投じていたが、これでNPB歴代最速に躍り出た。もちろん160キロ超えはそう簡単ではないが、近年は160キロ以上のボールを投げる助っ人外国人が増えている。今回は、「160キロ超えを見せた助っ人投手」をピックアップしてみた。
NPBで初めて160キロ超えを見せたクルーン

160キロ超の剛球で巨人、横浜でクローザーとして活躍したクルーン
NPBで初めて160キロを超えるボールを投げたのがマーク・クルーンだ。横浜在籍時代の2005年、5月11日の
楽天戦で159キロを記録すると、7月19日の
阪神戦でNPB初の160キロ超えとなる161キロを計測。12回裏一死の場面で、
赤星憲広に対する初球だった。巨人に移籍した2008年には、新記録となる162キロを記録。6月1日の
ソフトバンク戦で
松田宣浩に対して投じたボールだった。初の160キロ超えはインパクトが大きく、「球が速かった助っ人」と言えばクルーンを思い浮かべるファンは多いだろう。
クルーンの次に160キロ超えを記録したのが
林昌勇だ。韓国の三星から2008年に
ヤクルトに加入し、その年に抑えに定着。いきなり30セーブを記録した。翌2009年も抑えとしてプレー。5月15日の阪神戦では、
金本知憲に対して自己最速となる160キロを計測した。韓国時代に160キロを超えたことはなかったが、NPBではクルーンに次いで2人目の160キロ超えとなった。当時は球界を代表するストッパーであったが、意外なことにリーグ最多セーブを記録したことはない。
巨人で活躍した
スコット・マシソンは、NPB史上4人目、助っ人では3人目の160キロ超え投手だ。来日1年目の2012年に、
西村健太朗、
山口鉄也とともにリーグ最強のリリーフ陣「スコット鉄太朗」を形成。安定感のある投球で投手陣を支えた。160キロを記録したのは7月5日の
DeNA戦。抑えとして登板した9回だった。160キロを計測した2012年は10セーブ8ホールドに終わったが、翌2013年はリーグトップの40ホールドを記録。2016年にも41ホールドで再びタイトルを獲得している。
2010年代後半は160キロ超えが増加
2016年には、ソフトバンク時代の
ロベルト・スアレス(現阪神)が160キロ超えを達成。クライマックスシリーズに中継ぎとして登板した際、
ブランドン・レアードに投じたボールが161キロを計測し、球団史上最速記録を更新した(それまでは159キロ)。また、阪神に移籍後の2021年には自己最速を更新する163キロをマーク。6月8日の
日本ハム戦での一球で、相手は球界屈指の打者である
近藤健介だったが、ファウルにするのがやっとだった。
また、2017年8月29日には阪神の
ラファエル・ドリスがヤクルト戦で161キロを計測。2018年には、巨人の
アルキメデス・カミネロが6月14日のソフトバンク戦で161キロのボールを投じている。2019年には巨人の
ルビー・デラロサが161キロ、DeNAの
エドウィン・エスコバーが160キロを記録(2021年に163キロを投げて自己最速を更新)と、2010年代後半になると剛速球を投げる助っ人が一気に増えた。
2020年に入るとさらにその数はさらに増え、
西武の
リード・ギャレットや中日の
ライデル・マルティネス、後にNPB最速のボールを投じることになる巨人のチアゴ・ビエイラが160キロ超えを計測した。
スアレス、デラロサ、エスコバー、ギャレット、マルティネス、ビエイラは今もNPB所属。以前は160キロのボールはめったに見られなかったが、現在では当たり前のようになりつつある。
最速争いはどうなる?
今季注目したいのが「最速争い」だ。8月13日の中日戦で巨人のチアゴ・ビエイラが球速166キロを記録してNPB最速を更新したが、それまでに
大谷翔平と並んでNPB最速だったのが広島のロベルト・コルニエルだ。
2020年に育成選手として広島に入団したコルニエルは、2021年3月に支配下に昇格。4月1日の阪神戦で中継ぎに起用されると、球団史上最速の161キロを記録した。さらに、6月20日のDeNA戦では日本球界最速タイとなる165キロを計測。海の向こうで大活躍を見せている大谷翔平と並んだことでも大きな注目を集めた。
わずか2カ月で最速の座を奪われてしまったコルニエルだが、中継ぎに定着し、ここまで堅実な投球を続けている。登板機会も増えており、自己最速を更新し、ビエイラと並び、または超える可能性もゼロではない。
NPBで160キロ超えを記録した助っ人を紹介した。ビエイラとコルニエルだけでなく、今季はスアレスとエスコバーも自己最速を更新。他にも160キロ超えを記録している助っ人が何人も在籍しているため、ビエイラとコルニエル以外の助っ人が最速に躍り出る可能性もあるだろう。こうした「NPB史上最速」を巡る戦いにも注目だ。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM